ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する、エベロリムス薬剤溶出ステントの安全性と有効性を評価したEXAMINATION試験の長期5年フォローアップの結果が、スペイン・バルセロナ大学病院のManel Sabate氏らにより報告された。エベロリムス薬剤溶出ステント(EES)群 vs.ベアメタルステント(BMS)群の主要複合アウトカム発生について、EES群の有意な低下が示されたという。これまで新世代薬剤溶出ステントの長期追跡の報告は少なく、著者は、「今回得られた所見はSTEMI患者を対象とした、新たな生体吸収性ポリマーベース金属ステントや生体吸収性スキャフォールドの評価基準とするべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年10月28日号掲載の報告。
1,489例をEES群とBMS群に無作為化しフォローアップ
EXAMINATION試験は、イタリア・スペイン、オランダの12施設で、2008年12月31日~10年5月15日に、発症から48時間以内のSTEMI患者1,489例をEES(751例)またはBMS(747例)を受ける群に無作為に割り付けて行われた。無作為化にはコンピュータ制御の中央システム(電話による)が用いられ、層別化も中央施設で行われた。
主要アウトカムは患者指向のエンドポイントで、全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合であった。これまで最長2年のフォローアップ評価では、EES群の血行再建術およびステント血栓症の発生が有意に抑制されたことが示されたが、同複合アウトカムの有意差は示されなかった。
今回、研究グループは、長期5年の同複合アウトカムをintention to treat解析にて評価した。
全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合アウトカム発生が有意に低下
5年時点の評価データが入手できたのは、EES群731例、BMS群727例であった(両群とも97%)。両群特性は類似しており、抗血小板2剤併用療法の使用についても1年超以降に減少、5年時点の使用率はEES群10%(64/648例)、BMS群9%(57/622例)であった。
結果、5年時点の患者指向複合エンドポイントの発生は、EES群21%(159/751例)、BMS群26%(192/747例)で、EES群の有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98、p=0.033)。この差は主にEES群の全死因死亡が有意に抑制されたことによるものであった(65例[9%] vs.88例[12%]、HR:0.72、95%CI:0.52~0.10、p=0.047)。
一方、2年時点評価で有意差が示された血行再建術の発生は、5年時点では有意な低下がみられなかった(12% vs.16%、HR:0.77、95%CI:0.59~1.01、p=0.06)。ステント血栓症も有意な低下がみられなかった(2% vs.2%、同:0.65、0.31~1.36、p=0.25)。
心筋梗塞の5年時点の発生は、EES群5%(35/751例)、BMS群4%(27/747例)であった(HR:1.27、95%CI:0.77~2.10、p=0.35;目標血管関連発生HR:0.90、p=0.71/非目標血管関連発生HR:2.44、p=0.07)。