重度虚血性僧帽弁逆流症に対する僧帽弁の形成術と置換術では、2年後の死亡率や左室収縮終期容積係数(LVESVI)は同等だが、中等度~重度逆流症の再発率は形成術群が大幅に高率であったことが報告された。心不全関連の重度有害事象や心血管関連の再入院も、形成術群で高率だった。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のD. Goldstein氏らが行った無作為化比較試験の結果、示された。同試験については術後1年における結果がすでに発表されており、LVESVI、生存率、有害イベント発生率のいずれも両群で同等だった。NEJM誌オンライン版2015年11月9日号で発表した。
2年後の臨床・心エコーのアウトカムを比較
研究グループは、重度虚血性僧帽弁逆流症の患者251例を無作為に2群に割り付け、一方には僧帽弁の形成術を、もう一方には置換術を行った。
2年間追跡を行い、両群の臨床的アウトカムと心エコーによるアウトカムについて比較した。
心不全関連有害事象や心血管関連の再入院も形成術群で高率
結果、2年死亡率は形成術群が19.0%、置換術群が23.2%と有意差はなかった(ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.46~1.35、p=0.39)。また、2年後のLVESVIについても、生存者における平均値は形成術群52.6mL/m
2(標準偏差:27.7、ベースラインからの変化平均値:-9.0)、置換術群60.6mL/m
2(それぞれ39.0、-6.5)と、有意な差はみられなかった。
一方、中等度~重度の逆流症再発率は、置換術群が3.8%に対し、形成術群は58.8%と有意に高率だった(p<0.001)。
重度有害事象や再入院については、両群で有意差はなかったものの、心不全関連の重度有害事象や心血管関連の再入院は、形成術群で有意に高率だった(それぞれ、p=0.05、p=0.01)。
ミネソタ心不全質問表に基づく評価は、置換術群が形成術群に比べ、より大幅な改善の傾向が認められた(p=0.07)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)