長い冠動脈病変へのDES、血管内超音波ガイド下で予後改善/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/02

 

 病変長が長い冠動脈病変に対する薬剤溶出ステント(DES)留置術では、血管内超音波(IVUS)ガイド下留置が冠動脈造影ガイド下留置よりも、予後は良好であることが、韓国・仁済大学上渓白病院のSung-Jin Hong氏らが行ったIVUS-XPL試験で示された。DESによる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では、びまん性の病変長の長い冠動脈病変は短い病変に比べ、ステント内再狭窄やステント血栓症の発症率が高い。IVUSは、複雑な冠動脈病変へのPCI施行前後の有益な情報の収集に有用であるが、合併症の可能性があり、DESでの使用のデータは少ないという。JAMA誌2015年11月24日号掲載の報告。

IVUSガイド下DES留置術の臨床的有用性を無作為化試験で評価
 IVUS-XPL試験は、病変長の長い冠動脈病変に対するエベロリムス溶出ステント(Xience prime)留置術におけるIVUSガイドの臨床的有用性を評価する医師主導の多施設共同無作為化試験(韓国Cardiovascular Research Centerなどの助成による)。

 対象は、典型的な胸痛がみられるか、心筋梗塞が確認され、冠動脈造影で28mm以上のステントの留置を要すると判定された冠動脈病変を有する患者であった。

 被験者は、エベロリムス溶出ステントをIVUSガイド下または冠動脈造影ガイド下に留置する群に無作為に割り付けられ、術後は6ヵ月以上のアスピリンとクロピドグレルの投与を受けた。

 主要評価項目は、1年時の主要有害心イベント(心臓死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建の複合エンドポイント)の発生とした。

 2010年10月~2014年7月に、韓国の20施設に1,400例が登録され、IVUSガイド下DES留置群に700例、冠動脈造影ガイド下DES留置群に700例が割り付けられた。

主に標的病変血行再建のリスク低下が寄与
 全体の平均年齢は64±9歳、男性が69%で、平均標的病変長は39.3±12.7mmであり、背景因子は両群間でバランスがよく取れていた。1,323例(94.5%)が1年のフォローアップを完遂した。

 1年時のIVUSガイド群の主要有害心イベント発生率は2.9%(19/660例)であった。冠動脈造影ガイド群の5.8%(39/663例)との絶対群間差は-2.97%(95%信頼区間[CI]:-5.14~-0.79)であり、IVUSガイド群で有意に低減した(ハザード比[HR]:0.48、95%CI:0.28~0.83、p=0.007)。

 虚血による標的病変血行再建は、IVUSガイド群が2.5%(17/660例)であり、冠動脈造影ガイド群の5.0%(33/663例)に比べ有意に良好であった(HR:0.51、95%CI:0.28~0.91、p=0.02)。

 一方、心臓死(0.4 vs.0.7%、HR:0.60、95%CI:0.14~2.52、p=0.48)および標的病変心筋梗塞(0 vs.0.1%、p=0.32)の発生率には、両群間に差を認めなかった。また、ステント血栓症の発生率も両群で同等であった(0.3 vs.0.3%、HR:1.00、95%CI:0.14~7.10、p>0.99)。

 著者は、「IVUSガイド下DES留置術は、冠動脈造影ガイド下DES留置術に比べ主要有害心イベントの発生率が低く、これは主に標的病変血行再建のリスクが低いためであった」とまとめ、「IVUSガイドの臨床的有用性には、最小血管径が比較的大きな血管に対し、大きなバルーンを用いて補助的な後拡張を行う頻度が高いことが寄与している可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)