英国・ニューカッスル大学のCarol Jagger氏らは、イングランドにおける1991~2011年の高齢者の健康寿命(主観的健康感、認知機能、日常生活動作[ADL]障害で評価)の変化を調べた。10年ごと2回にわたったCognitive Function and Ageing Study IおよびIIの結果を分析した結果、認知機能障害のない期間と主観的健康感は増大、ADL障害についてはあまり変化していないことが明らかになったという。こうした結果の背景要因として著者は、「明らかではないが、先の10年に肥満者が増大したことが考えられる」と分析したうえで、「われわれの所見は、政府、雇用者そして個人に重要な示唆を与える。とくに勤続年齢の引き上げに関して、また地域医療サービスや軽症~中等度の障害者を支える家族介護者に対して重要な示唆を与える」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。
イングランドの1991~2011年の健康寿命の変化を3指標で分析
研究グループは、イングランドの1991~2011年における健康寿命の変化について、同一の試験デザイン・方法を用いて10年ごとに比較する検討を行った。
検討には、イングランドの3地域(ケンブリッジシャー、ニューカッスル、ノッティンガム)で65歳以上の住民が参加したCognitive Function and Ageing Studyのベースラインデータを用い、3つの健康指標―主観的健康感(優良/良好、普通、不良)、認知機能障害(MMSE認知機能検査スコア評価で中等度、軽度、正常)、ADL障害(正常、軽度、中等度)について有病率を算出した。Sullivan法を用いて3地域統合の健康寿命を算出。同一期間の標準的生活テーブルに当てはめて年齢特異的また性特異的有病率を算出した。
認知機能障害期間は短縮、主観的健康感の期間は延長、障害のない期間は微増
1991~2011年で、65歳時の健康寿命は男女とも増加していた(男性4.5年、女性3.6年)。あらゆる認知機能障害のない期間が延長(男性4.2年[95%信頼区間[CI]:4.2~4.3]、女性4.4年[同:4.3~4.5])し、軽度または中等度の認知障害を伴う期間は短縮していた。
同様に、主観的健康感が優良/良好であった期間が延長し(男性3.8年[95%CI:3.5~4.1]、女性3.1年[同:2.7~3.4])ていた。
一方で、障害のない期間の延長は、主観的健康感が優良/良好や認知障害のない期間の延長と比べてわずかで、とくに女性では軽度の障害期間の延長により、男性と比べてわずかであった(女性0.5年[95%CI:0.2~0.9]、男性2.6年[同:2.3~2.9])。
(医療ライター 武藤 まき)