経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)導入の臨床への影響を調べた結果、TAVRの施行増大に伴う外科的大動脈弁置換術(SAVR)の減少はわずかであった。また、TAVR患者はSAVR患者よりも高齢で手術リスクが高く、院内死亡率は両群ともに減少していたが、TAVRのほうが減少の程度が大きかったことなどが判明した。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのJochen Reinohl氏らが、同国における2007~13年の動向を調べ報告した。NEJM誌2015年12月17日号掲載の報告。
2007~13年ドイツの、TAVRと外科的大動脈弁置換術の実施データを分析
TAVR導入以来、現在の標準治療とされているSAVRの効果との比較において、その臨床に与える効果については疑問符が呈されてきた。研究グループは、全国的な調査を行うことで、新規技術導入の既存臨床への影響を調べた。
2007~13年にドイツ全国で行われたTAVRとSAVRそれぞれについて、患者特性と院内アウトカムのデータを分析した。
TAVRは144件→9,147件に、SAVRは8,622件→7,048件に
同期間の実施件数は、TAVRが3万2,581例、SAVRが5万5,992例であった。
TAVRの実施は2007年には144例であったが、13年は9,147件に増大した。一方で、SAVRの実施は、8,622件から7,048件に減少していた。
患者の特性をみたところ、TAVR患者の平均年齢は81.0±6.1歳、SAVR患者は70.2±10.0歳で、TAVR患者のほうが高齢であった。また、術前リスク(EuroSCOREで評価、尺度は0~100%で高率ほどリスクが高い、また20%以上は高リスクとされる)が22.4% vs.6.3%とTAVR患者で高かった。
院内死亡率は、両群とも減少していた。TAVR群は2007年13.2%、13年は5.4%に、SAVR群は同3.8%から2.2%への減少だった。
合併症の発生も両群ともに、概して減少の傾向が認められた。TAVR群では出血、ペースメーカー埋設は有意に減少し、脳卒中と急性腎不全も有意差はみられなかったが減少していた。SAVR群は、脳卒中、出血、ペースメーカー埋設が有意に減少していた。しかし、急性腎不全が有意に増大した。