鼠径ヘルニアの修復に使用する合成メッシュについて、低価格の滅菌した蚊帳用メッシュを用いても、高額な市販軽量合成メッシュを使用した場合と術後1年の再発率や術後合併症リスクは、いずれも同等であることが明らかにされた。スウェーデン・ウメオ大学のJenny Lofgren氏らが、302例の男性患者を対象に行った試験で明らかにした。低・中所得国では、市販軽量メッシュは高価なため使えない患者も多く、滅菌した蚊帳用のメッシュが代替品として使われているという。ただしこれまでその治療アウトカムについて厳格な試験は行われていなかった。NEJM誌2016年1月14日号掲載の報告。
術後1年のヘルニア再発と術後合併症リスクを比較
研究グループは、ウガンダ東部で、初発片側還納性鼠径ヘルニアの成人男性患者302例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行い、低価格メッシュと市販メッシュによる修復の治療アウトカムを比較した。両メッシュともに、軽量メッシュだった。
被験者は18歳以上で、手術は熟練の外科医4人がそれぞれ行った。
主要評価項目は、術後1年のヘルニア再発と術後合併症だった。
ヘルニア再発率、低価格群で0.7%、市販メッシュ群で0%と同等
被験者の追跡率は、術後2週で97.3%、術後1年で95.6%だった。
ヘルニア再発率は、低価格メッシュ群0.7%(1例)、市販メッシュ群0%(0例)と、両群で有意差はなかった(絶対リスク差:0.7ポイント、95%信頼区間:-1.2~2.6、p=1.0)。
また、術後合併症の発症率も、低価格メッシュ群30.8%(44例)、市販メッシュ群は29.7%(44例)と同等だった(絶対リスク差:1.0ポイント、同:-9.5~11.6、p=1.0)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)