下痢型過敏性腸症候群(IBS)に対し、新規経口薬eluxadolineは男女を問わず下痢症状を軽減し新たな治療薬となりうることが、Anthony J. Lembo氏らによる2件の第III相試験(多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験)の結果、示された。100mgの1日2回投与で6ヵ月間の持続効果が確認された。eluxadolineは混合型オピオイド作用(μ/κオピオイド受容体アゴニストとδオピオイド受容体アンタゴニスト)を有する製剤。対プラセボの100mg、200mg用量(いずれも1日2回)の検討が行われた第II相試験では、200mg用量の効果に優位性はなく、むしろ有害事象が多かったことから、第III相試験では75mg、100mg用量について対プラセボの有効性(26週)、安全性(52週)を評価した。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。
eluxadoline75mgまたは100mg/1日2回とプラセボを比較
試験は2,427例の下痢型IBS成人患者を、eluxadoline(75mgまたは100mg)またはプラセボを1日2回投与する群に無作為に割り付けて、26週間(IBS-3002試験)または52週間(IBS-3001試験)の治療を行った。
主要エンドポイントは、腹痛の軽減(ベースライン平均スコアより30%以上軽減)、便性状の改善(便性状スコアが5未満)の両効果が同一日に確認された患者(レスポンスあり)の割合とした。レスポンスありの定義は、初期12週間(米国FDA規定のエンドポイント)、26週間(欧州医薬品庁[EMA]エンドポイント)のそれぞれの評価期間中50%以上(最低60日、110日)効果ありの記録日があった患者とした。
12週間評価、26週間評価とも100mg群の効果が優れる
第1~12週では、eluxadoline(75mgまたは100mg)群のほうがプラセボ群よりも、主要エンドポイントを達成した患者の割合が多かった。IBS-3001試験被験者ではプラセボ群17.1%に対し、75mg群23.9%(p=0.01)、100mg群25.1%(p=0.004)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群16.2%に対し、75mg群28.9%(p<0.001)、100mg群29.6%(p<0.001)であった。
第1~26週の評価については、IBS-3001試験被験者ではプラセボ群19.0%に対し、75mg群23.4%(p=0.11)、100mg群29.3%(p<0.001)。IBS-3002試験被験者ではプラセボ群20.2%に対し、75mg群30.4%(p=0.001)、100mg群32.7%(p<0.001)であった。
安全性の評価(IBS-3002試験とIBS-3001試験の両被験者データ)では、プラセボ群と比較して75mg/100mg群で最も多く共通してみられた有害事象は、悪心(5.1% vs.8.1%/7.5%)、便秘(2.5% vs.7.4%/8.6%)、腹痛(4.1% vs.5.8%/7.2%)であった。膵炎の発症は、安全性評価集団(1,666例)中5例(0.3%)であった(75mg群2例、100mg群3例)であった。