進行NSCLC治療、全例への遺伝子検査は有用か/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/02/05

 

 進行性非小細胞肺がん(NSCLC)治療に関して、患者の分子プロファイリングを日常診療として全国的に実施することは可能であり、その作業は遺伝子変異や融合遺伝子など遺伝子異常の頻度、所要日数および治療効果からみても有用であることが確認された。フランス・マルセイユ公立病院機構(APHM)のFabrice Barlesi氏らが、French Collaborative Thoracic Intergroup(IFCT)による1年間のプログラムの成果を踏まえて報告した。NSCLCの治療においては、既知のドライバー遺伝子について日常的に患者の分子プロファイルを調べることが推奨されているが、その国家的な実現性や有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2016年1月14日号掲載の報告。

仏国内の全NSCLC患者で遺伝子検査を実施し、遺伝子異常の頻度や予後等を調査
 研究グループは、2012年4月~13年4月の間、フランス各地の分子遺伝学センター28施設(フランス全土をカバー)において、進行性NSCLC患者全症例を対象に、EGFR、HER2ERBB2)、KRASBRAFPIK3CAの遺伝子変異およびALK融合遺伝子の検査を行った。遺伝子検査は進行性NSCLCに義務づけられ、検査の処方は治療している医師の責任で行われた。患者は、各地の集学的腫瘍検討会による調査の後、国内外のガイドラインに従ってルーチン治療を受けた。

 主要評価項目は、前述の6つの遺伝子異常の頻度、副次評価項目は検査結果報告までの所要時間、および患者の臨床転帰(奏効率[ORR]、無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS])とした。

遺伝子異常は、約半数の患者で認められ、治療効果改善と関連
 NSCLC患者1万7,664例(平均年齢64.5歳[範囲18~98]、男性65%、喫煙歴あり81%、腺がん76%)において、1万8,679件の遺伝子検査が行われた。検体採取から検査開始までの期間中央値は8日(四分位範囲[IQR]:4~16)、検査開始から結果報告書提出までの期間中央値は11日(IQR:7~16)であった。

 遺伝子異常は、約50%で確認された。EGFR遺伝子変異は解析し得た1万7,706件中1,947件(11%)、HER2遺伝子変異は1万1,723件中98件(1%)、BRAF遺伝子変異は1万3,906件中262件(2%)、KRAS遺伝子変異は1万7,001件中4,894件(29%)、PIK3CA遺伝子変異は1万678件中252件(2%)、ALK融合遺伝子は8,134件中388件(5%)に認められた。遺伝子異常の存在が1次治療の決定に際して考慮されたのは、データを入手し得た8,147例中4,176例(51%)であった。

 検査実施日からの追跡期間中央値24.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:24.8~25.0)の時点で、遺伝子異常なしと比較して遺伝子異常ありでは、1次治療および2次治療いずれにおいてもORRが有意に改善した。1次治療は、あり37%(95%CI:34.7~38.2) vs.なし33%(29.5~35.6)(p=0.03)、2次治療は、あり17%(15.0~18.8) vs.なし9%(6.7~11.9)(p<0.0001)であった。

 1次治療後のPFSならびにOSも同様の結果であった。PFSは、あり10.0ヵ月(9.2~10.7) vs.なし7.1ヵ月(6.1~7.9)(p<0.0001)、OSは、あり16.5ヵ月(15.0~18.3) vs.なし11.8ヵ月(10.1~13.5)(p<0.0001)であった。

 Cox多変量解析の結果、ALK融合遺伝子(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.5~0.9)、EGFR遺伝子変異(HR:0.53、95%CI:0.4~0.6)、HER2遺伝子変異(HR:0.60、95%CI:0.4~1.0)が、予後良好因子であることが認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)