喫煙者(元喫煙者も含む)では、呼気時の中枢気道虚脱(ECAC)が呼吸器QOLの悪化と関連していることを、米国・アラバマ大学のSurya P. Bhatt氏らが、COPDGene研究で得られた呼気・吸気CT画像を解析し、明らかにした。ECACは、呼気時に気道が50%以上狭窄する病態として定義され、気管軟骨の脆弱化や気管後壁(膜性壁)の過伸展により生じる。喫煙や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と関連するといわれているが、ECACの有病率や臨床的意義はわかっていなかった。JAMA誌オンライン版2016年2月2日号掲載報告。
喫煙者約9,000例の吸気呼気CT画像を評価、ECACと呼吸器QOLとの関連を解析
研究グループは、米国21施設で実施されている大規模多施設観察研究COPDGeneに登録された45~80歳の現喫煙者および元喫煙者(COPDと喘息以外の肺疾患を有する人は除外)計8,820例について、ベースラインの吸気呼気CT画像を解析し、基礎肺疾患とは独立してECACの存在が呼吸器QOLなどと関連しているかどうか検討した。登録期間は2008年1月~11年6月で、14年10月まで、3~6ヵ月ごとに自動通信システムによるアンケート調査にて追跡調査を行った。
ECACの評価は、まず研究者が盲検下でベースラインのCT画像から気道の短軸径(大動脈弓部、気管分岐部、中間気管支幹の3ヵ所)を測定し、吸気から呼気終末までに30%以上減少(気道断面積の50%減少に相当とみなす)している患者をECAC陽性患者とした。さらにこの陽性患者のCT画像を胸部放射線科医2人と呼吸器科医1人が評価し、ECAC患者を確定した。
主要評価項目は、ベースラインの呼吸器QOLで、疾患特異的な健康関連QOL評価尺度St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いて評価した(SGRQスコアの範囲:0~100、臨床的に意味のある最少差[MCID]は4)。副次評価項目は、ベースラインにおける息切れ(修正MRC[mMRC]息切れスケール質問票による評価:範囲0~4、MCIDは0.7)、6分間歩行距離(American Thoracic Societyガイドラインに基づく評価:MCIDは30m)、および追跡期間中の増悪頻度(件/100人年)とした。
ECACの存在と、呼吸器QOL低下および息切れの強さが有意に関連
8,820例(平均年齢59.7歳、男性56.7%、現在喫煙51.7%)中、443例でECACが確認された(有病率5.0%)。ECAC患者は非ECAC患者と比較して、ベースラインのSGRQスコアが悪かった(30.9 vs.26.5、p<0.001、絶対差:4.4、95%CI:2.2~6.6)。ベースラインのmMRCスコア(平均±SD値:1.7±1.5 vs.1.3±1.4、絶対差:0.4、95%CI:0.2~0.6、p<0.001/中央値:2.0 vs.1.0)、6分間歩行距離(399m vs.417m、絶対差:18m、95%CI:6~30、p=0.003)もECAC患者で不良であった。
年齢、性別、人種、BMI、FEV
1(1秒量)、喫煙量(箱・年)、肺気腫で補正した多変量解析の結果、ECACは呼吸器QOL悪化および息切れの強さと有意に関連していた(いずれもp=0.002)。一方、6分間歩行距離低値との関連は認められなかった(p=0.30)。
追跡データが得られたのは7,456例(ECAC患者443例中413例[93%]、非ECAC患者8,377例中7,043例[84%])で、追跡期間中央値4.3年(範囲:0.2~6.7年)において、ECAC患者で非ECAC患者と比較し増悪頻度(58 vs.35件/100人年、発症率比[IRR]:1.49、95%CI:1.29~1.72、p<0.001)、および入院を要する重篤な増悪の頻度(17 vs.10件/100人年、IRR:1.83、95%CI:1.51~2.21、p<0.001)が増加した。
著者は、「喫煙者における呼気時のECACと呼吸器QOL悪化について、さらなる研究で長期的な臨床転帰との関連を評価する必要がある」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)