魚介類摂取頻度が増えると、脳内水銀量は増加するものの、アルツハイマー型認知症を示唆する脳神経病理とは関連しない。また、アポリポ蛋白E(APOEε4)遺伝子を持つ人では、魚介類摂取がアルツハイマー病リスクの軽減とつながっていることを、米国・ラッシュ大学メディカルセンターのMartha Clare Morris氏らが、高齢者286例の剖検脳と生前の魚介類摂取頻度との関連を分析した結果、明らかにした。JAMA誌2016年2月2日号掲載の報告より。
平均年齢約90歳の高齢者を対象に、横断解析
魚介類の摂取量は、神経毒として知られる水銀汚染の懸念が指摘されながらも、健康ベネフィットがあるとして増大している。研究グループは、魚介類摂取量の増加と脳内水銀量の増加に相関関係が認められるのか、また脳神経病理との関連が認められるかを調べた。
対象としたのは、2004~13年に、米国シカゴのリタイアメント・コミュニティ居住者で臨床神経病理コホート研究「Memory and Aging Project」に参加し死亡した高齢者286例。生前の魚介類摂取頻度を調べ、死後に行った剖検脳所見との関連を横断的に分析した。
被験者の平均年齢は89.9(SD 6.1)歳、女性は67%(193例)で、教育を受けていた年数は平均14.6(同2.7)年だった。魚介類摂取頻度についての質問は、死亡より平均4.5年前に開始されていた。
主要評価項目は、認知症関連病理の評価として、アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、大小の梗塞数とした。魚介類およびn-3脂肪酸の摂取量は死亡前年単位で評価。水銀およびセレニウムの組織片濃度は、機器的中性子放射化分析法にて調べた。
α-リノレン酸摂取量が多いと脳大梗塞リスクは半減
その結果、1週間の平均魚介類摂取頻度と、脳内水銀量の相関性が認められた(ρ=0.16、p=0.02)。
年齢や性別、教育レベル、総エネルギー摂取量で補正後、
APOEε4遺伝子を持つ人については、魚介類を週1回以上食べる人は、老人斑密度が低く(β=-0.69)、重度・広範囲にわたる神経原線維濃縮体が少ない(β=-0.77)など、アルツハイマー病の病理学的特徴を持つ人が少なく、病理学的にアルツハイマー病と診断される人も少なかった(β=-0.53)。
また、α-リノレン酸摂取量について三分位に分けて検討した結果、最高分位の人は最低分位の人に比べ、脳大梗塞リスクのおよそ半減が認められた(オッズ比:0.51、95%信頼区間:0.27~0.94)。
なお、魚油サプリメント摂取はいかなる神経病理マーカーとも有意な関連が認められなかった。また、脳内水銀濃度と脳神経病理学的な異常との間の関連も示されなかったという。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)