脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し降圧治療を行う際、目標収縮期血圧値を140mmHgに設定しても、130mmHgに設定した場合と比べて、12ヵ月後の両群間の降圧差は3mmHgとわずかで、臨床的重要性は同等であることが示された。英国・ケンブリッジ大学のJonathan Mant氏らが、529例を対象に行った非盲検無作為化試験「PAST-BP」の結果、明らかにした。プライマリケアにおいて、脳卒中/一過性脳虚血発作後患者の異なる目標血圧値に関する試験は、これが初めてという。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。
99ヵ所の一般診療所を通じ529例を追跡
研究グループは2009~11年にかけて、英国99ヵ所の一般診療所を通じ、脳卒中または一過性脳虚血発作を発症し、収縮期血圧値が125mmHg以上の529例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、目標血圧値を130mmHg未満またはベースライン血圧値が140mmHg未満の場合には10mmHg低下を目標とする厳格降圧群と、目標血圧値を140mmHg未満とする標準降圧群に割り付けた。
目標血圧値が異なるほかは、両群の患者には同様に、プライマリケアチームによる積極的なマネジメントが実施された。
主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月時点での収縮期血圧値の変化だった。
降圧差は2.9mmHg、140mmHg未満目標で臨床的に意義ある降圧は得られる
被験者529例(平均年齢72歳)のうち、主要解析に含まれたのは379例(厳格降圧群182例、標準降圧群197例)だった。
厳格降圧群の平均収縮期血圧値は、ベースラインから12ヵ月間で16.1mmHg低下し、127.4mmHgだった。一方、標準降圧群は12.8mmHg低下の129.4mmHgで、両群間の差は2.9mmHg(95%信頼区間:0.2~5.7、p=0.03)だった。
結果を踏まえて著者は、「脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し、目標収縮期血圧値を140mmHg未満ではなく130mmHg未満に設定しても、降圧のさらなる延伸はわずかで、目標血圧値140mmHg未満で臨床的に重要な降圧は得られる」と結論している。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)