巨細胞性動脈炎(GCA)患者に対し、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体トシリズマブと経口プレドニゾロンの併用投与は、経口プレドニゾロン単独投与に比べ、完全寛解率や、長期無再発生存率も高いことが示された。スイス・ベルン大学のPeter M. Villiger氏らが、巨細胞性動脈炎患者30例を対象に行った初となる無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2016年3月4日号で発表された。巨細胞性動脈炎に対し、糖質コルチコイド治療はゴールドスタンダードで重篤な血管合併症を防ぐが、罹患・死亡率が高い。トシリズマブは、巨細胞性動脈炎の寛解導入・維持に用いられていることから、研究グループは、新規および再発患者に対するトシリズマブの安全性と有効性を確認するため今回の検討を行った。
投与後12週の完全寛解率を比較
検討は第II相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で、2012年3月3日~14年9月9日の間、ベルン大学病院単施設で、米国リウマチ学会1990年版基準を満たした巨細胞性動脈炎の新規または再発診断を受けた50歳以上の患者30例を対象に行われた。
研究グループは被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはトシリズマブを(8mg/kg、20例)、もう一方にはプラセボを(10例)、4週に1回、52週(13回)にわたり静脈内投与した。なお、両群に経口プレドニゾロン(1mg/kg/日で開始し、徐々に0mgまで減量)が投与された。
主要評価項目は、12週目のプレドニゾロン投与量0.1mg/kg/日時点で、完全寛解が認められた患者の割合だった。
12週時点で完全寛解はトシリズマブ併用群85%、プラセボ群40%と有意な差
被験者のうち巨細胞性動脈炎の新規発症者は、トシリズマブ+プレドニゾロン群16例(80%)、プラセボ+プレドニゾロン群7例(70%)だった。
結果、12週時点で完全寛解が認められたのは、プラセボ群4例(40%)に対し、トシリズマブ併用群は17例(85%)と有意に高率だった(リスク差:45%、95%信頼区間[CI]:11~79、p=0.0301)。52週時点の無再発生存率は、プラセボ群2例(20%)に対し、トシリズマブ併用群17例(85%)だった(リスク差:65%、95%CI:36~94、p=0.0010)。
プレドニゾロン中止までの平均生存期間は、トシリズマブ併用群(38週)がプラセボ群(50週)より短く(両群差:12週、95%CI:7~17、p<0.0001)、そのため52週間のプレドニゾロン累積投与量は、プラセボ群110mg/kgに対し、トシリズマブ群は43mg/kgと有意な少量投与に結び付いた(p=0.0005)。
重篤有害事象の報告は、プラセボ群5例(50%)、トシリズマブ群7例(35%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)