過体重/肥満患者へのnaltrexone/bupropion組み合わせ治療は、主要有害心血管イベント(MACE)の発生について、プラセボとの比較において非劣性のマージン内であったことが、米国クリーブランド・クリニックセンターのSteven E. Nissen氏らによる、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照非劣性試験の結果、示された。ただし、著者は試験の検出力不足について指摘し、さらなる検討の必要性を提言している。肥満治療について、心血管アウトカムを評価した試験はほとんど行われていない。naltrexoneとbupropionはそれぞれ米国上市薬であるが、両者を組み合わせた肥満治療薬は心血管系の安全性について議論の的となっていた。JAMA誌2016年3月8日号掲載の報告。
初回MACE発生までの期間を無作為化試験で評価
試験は、米国266の医療施設で、2012年6月13日~13年1月21日に、心血管リスクが高い過体重/肥満の患者8,910例を登録して行われた。全員に、インターネットベースの体重管理プログラムが提供され、プラセボを受ける群(4,454例)、もしくはnaltrexone 32mg/日+bupropion 360mg/日を受ける群(4,456例)に、無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、無作為化から初回MACE発生までの期間であった。
主要解析では非劣性ハザード(HR)を評価。計画では、米国FDAの命に基づき、378例のイベント発生後のHRの95%信頼区間(CI)上限値1.4で評価すること(試験終了時)、約87例のイベント発生後に同上限値を2.0で評価すること(25%のイベント発生での中間解析)が計画に盛り込まれた。試験スポンサー(Orexigen Therapeutics社)とFDAにより、25%中間解析結果は、試験終了時まで開示しないことで合意がなされたが、スポンサーが特許公開をしたことで25%中間解析結果が公表されるところとなり、その違法性を理由に、試験のアカデミックリーダーシップが試験終了を勧告。スポンサーはこれを了承し試験は早期に打ち切りとなった。
MACE発生に関する非劣性マージンは満たしたが、早期終了で検出力不足
被験者8,910例は、平均年齢61.0(SD 7.3)歳、女性が54.5%、32.1%に心血管疾患歴があり、85.2%が糖尿病を有していた。BMI中央値は36.6(四分位範囲33.1~40.9)であった。
25%中間解析の結果、MACE発生は、プラセボ群59例(1.3%)、naltrexone/bupropion群35例(0.8%)であった(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90)。
事前計画イベント数の50%発生時の解析では、MACE発生は、プラセボ群102例(2.3%)、naltrexone/bupropion群90例(2.0%)であった(HR:0.88、95%CI:0.57~1.34)。
有害事象の頻度はnaltrexone/bupropion群が高く、胃腸系イベント14.2% vs.1.9%(p<0.001)、中枢神経系症状5.1% vs.1.2%(p<0.001)などが報告された。
著者は、「25%および50%中間解析でも、プラセボと比較したnaltrexone/bupropion MACE発生HRの95%CI上限値は2.0を超えなかった。一方で、予想外の試験早期終了のため、事前に設定された上限値1.4での非劣性の評価ができなかった。したがって、本治療の心血管系の安全性については、なお不明であり、十分な検出力を備えた試験で評価を行うことが必要であろう」とまとめている。