駆出率低下心不全、一方向性シャント作成デバイスの有効性をヒトで確認/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/12

 

 駆出率が低下した進行心不全患者において、一方向性の心房間シャント作成デバイスは安全に留置でき、早期の臨床転帰や血行動態転帰が改善される可能性があることが、カナダ・ラヴァル大学のMaria Del Trigo氏らの検討で示された。心不全患者では、上昇した左房圧を低下させることで症状が軽減し、入院のリスクが減少するとされる。V-Wave心房間シャント作成デバイスは、左心房から右心房への一方向性のシャントを作成することで左房圧を低下させるという。Lancet誌2016年3月26日号掲載の報告より。

10例で有用性を検証する概念実証コホート試験
 研究グループは、駆出率が低下した心不全患者に対するV-Wave心房間シャント作成デバイスの安全性と有効性をヒトで初めて検証する概念実証コホート試験を行った(V-Wave社の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、6ヵ月以上持続する慢性の虚血性または非虚血性の心筋症の既往歴を有し、NYHA心機能分類III度、ACC/AHA Stage Cの心不全であり、左室駆出率≦40%、肺毛細血管楔入圧(PCWP)の上昇(>15mmHg)がみられる患者であった。

 デバイスは、砂時計様の形状の自己拡張型のニチノール製フレームに、3つのブタ心膜由来の弁尖が縫合されており、砂時計の首の部分が卵円窩に位置し、左心房側に入口、右心房側に出口が漏斗状に拡張するように留置される。

 留置は、全身麻酔下に経食道心エコーガイド下経心房中隔カテーテル術により行われ、ベースライン、留置後1、3ヵ月時に臨床評価と心エコー検査が実施された。

 2013年10月10日~15年3月27日までに、カナダの単一施設(ラヴァル大学ケベック心肺研究所)に10例が登録された。

安全で実行可能、症状、QOL、運動能、PCWPが改善
 10例の平均年齢は62(8 SD)歳、男性が9例(90%)で、平均BMIは31(5 SD)、平均左室駆出率は25(8 SD)%であった。高血圧、糖尿病、心房細動がそれぞれ7例に、冠動脈疾患が9例に、慢性腎臓病(推定糸球体濾過量[eGFR]<60mL/分/1.73m2)が5例にみられた。

 平均手術時間は59(26 SD)分であった。全例でデバイスの留置が成功し、合併症が発現することなく翌日に退院した。3ヵ月のフォローアップ期間中にデバイス関連および手技関連の有害事象は発生せず、右心房から左心房へのシャントが発生した患者はいなかった。

 また、心不全の増悪で入院した患者はなかった。1例(10%)が1ヵ月時に消化管出血で入院した。左室駆出率15%、NT-proBNP 4,760pg/mL、心室性不整脈の既往のある1例(10%)が、持続性の難治性心室頻拍(VTストーム)により2ヵ月時に末期心不全を来して死亡した。

 1ヵ月時の経食道心エコー検査では、すべてのシャントが開存しており、血栓症やシャントの移動は認めなかった。

 ベースライン時にNYHA心機能分類III度の9例のうち7例(78%)が3ヵ月時にはII度に、1例(11%)がI度に改善し、1例は不変であった(p=0.0004)。

 デューク活動状態指標によるQOL評価では、平均スコアがベースラインの13(6.2 SD)点から3ヵ月時には24.8(12.9 SD)点に改善し(p=0.016)、カンザス市心筋症質問票では平均スコアが44.3(9.8 SD)点から79.1(13.0 SD)点へと有意に改善した(p=0.0001)。

 また、6分間歩行距離も244(112 SD)mから318(134 SD)mに有意に延長した(p=0.016)。

 PCWPは、ベースラインの平均23(5 SD)mmHgから3ヵ月時には平均17(8 SD)mmHgへと低下した(p=0.035)。右室圧、肺動脈圧、肺血管抵抗には変化はみられなかった。

 著者は、「デバイスを用いた左心房から右心房への一方向性のシャント作成の有効性が示されたことにより、駆出率が低下した心不全患者の治療において重要な転換が起きる可能性があり、大規模な無作為化試験の実施が正当化される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 絹川 弘一郎( きぬがわ こういちろう ) 氏

富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二(第二内科) 教授

J-CLEAR推薦コメンテーター