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中等度リスク大動脈弁狭窄症、TAVR vs.SAVR/NEJM

中等度リスクの大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対する非劣性が証明された。米国・コロンビア大学メディカルセンターのMartin B. Leon氏らが、第2世代デバイス(SAPIEN XT)の大規模臨床試験PARTNER 2試験の結果、2年時の全死因死亡および障害を伴う脳卒中の頻度はTAVRとSAVRとで同等であることを報告した。これまでの研究では、高リスク大動脈弁狭窄症患者において、TAVRとSAVRで生存率は同等であることが示されていた。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。
中等度リスク大動脈弁狭窄症患者約2,000例で、非劣性試験を実施
PARTNER 2試験は、2011年12月~13年11月、アメリカとカナダの57施設において実施された。対象は、多職種ハートチームによる臨床評価で中等度リスク(Society of Thoracic Surgeons[STS]≧4%)と判定された重症大動脈弁狭窄症患者2,032例であった。評価に基づき、経大腿アプローチ群または経心尖/経大動脈アプローチ群に層別後(76.3%および23.7%)、それぞれTAVR群またはSAVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は2年時の全死因死亡または障害を伴う脳卒中であった。障害を伴う脳卒中は、脳卒中発症後90日時点の障害重症度が修正Rankinスケール(0[症状なし]~ 6[死亡])で2以上と定義した。
主要評価項目の発生率はTAVR19%、SAVR21%で同等
intention-to-treat解析集団において、Kaplan-Meier法で算出した2年時の全死因死亡または障害を伴う脳卒中の発生率は、TAVR群19.3%、SAVR群21.1%であった。(TAVR群のハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.73~1.09、p=0.25)。Kaplan-Meier法イベント発生率およびGreenwood法による標準誤差を用いて算出した、SAVR群に対するTAVR群の主要評価項目のリスク比は0.92(95%CI:0.77~1.09)で、事前に定めた非劣性基準(95%CI上限値が1.20以下)を満たした(p=0.001)。主要評価項目の発生率は、経大腿アプローチではTAVR群がSAVR群より低かったが(16.8% vs.20.4%、HR:0.79、95%CI:0.62~1.00、p=0.05)、経心尖/経大動脈アプローチでは両群で有意差は認められなかった。
TAVR群では、SAVR群より大動脈弁口面積が大きく、急性腎障害、重篤な出血および新規心房細動の発生率は低かった。一方、SAVR群では重大な血管合併症や大動脈弁周囲逆流が少なかった。
なお、著者は今回の研究の限界として、割り付けた患者で予想外に脱落が多かったこと、すでにSAPIEN3生体弁が主流になっていること、適切なサイジングのための大動脈径評価にマルチスライスCTが使用されていなかったことがある、などを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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PARTNER 2試験:TAVRのintermediate riskの高度AS症例における2年間の治療成績はSAVRと同等(解説:許 俊鋭 氏)-527
コメンテーター : 許 俊鋭( きょ しゅんえい ) 氏
東京都健康長寿医療センター センター長
J-CLEAR評議員