虚血性心筋症の患者に対し、冠動脈バイパス術(CABG)と薬物治療を併用することで、薬物治療のみの場合に比べ、約10年間の全死因死亡率(主要アウトカム)、心血管死亡率や全死因死亡または心血管系が原因の入院の発生率(副次アウトカム)は、いずれも2~3割有意に減少することが示された。米国・デューク大学のEric J. Velazquez氏らが、約1,200例の患者を対象に行った無作為化比較試験STICHESの結果、明らかにしNEJM誌オンライン版2016年4月3日号で発表した。薬物治療のみと比較したCABG+薬物治療の生存ベネフィットは、冠動脈疾患、心不全、および重篤な左室収縮機能障害を有する患者については不明であった。
虚血性心筋症の患者を対象に、中央値9.8年で追跡
研究グループは、2002年7月~07年5月にかけて、駆出分画率が35%以下で、CABGにより改善が見込まれる冠動脈疾患を有する患者1,212例を対象に試験を行った。無作為に2群に分け、一方にはCABGと薬物治療を(610例)、もう一方には薬物治療のみを(602例)、それぞれ行いアウトカムを比較した。
主要評価項目は、全死因死亡率だった。主な副次評価項目は、心血管死、全死因死亡または心血管が原因の入院などだった。
追跡期間の中央値(延長追跡調査期間を含む)は、9.8年だった。
全死因死亡または心血管が原因の入院、CABGにより3割減少
その結果、全死因死亡率は薬物治療群66.1%(398例)だったのに対し、CABG群は58.9%(359例)と有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.73~0.97、log-rank検定によるp=0.02)。
心血管死も、薬物治療群49.3%(297例)に対し、CABG群は40.5%(247例)と、発生比は約8割にとどまった(HR:0.79、95%CI:0.66~0.93、log-rank検定によるp=0.006)。
全死因死亡または心血管が原因の入院の発生率も、薬物治療群87.0%(524例)に対し、CABG群は76.6%(467例)と約7割にとどまった(HR:0.72、95%CI:0.64~0.82、log-rank検定によるp<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)