慢性心不全患者に対し、エナラプリルに加えてアリスキレン(商品名:ラジレス)を投与しても、有害事象が増大するだけでベネフィットは増大しないことが、英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らによる無作為化試験の結果、示された。アリスキレンのエナラプリルに対する非劣性は示されなかった。慢性心不全患者に対し、ACE阻害薬は死亡および入院の発生を減少することが知られている。しかし、それら患者に対するレニン阻害薬がどのような役割を果たすのかは不明であった。NEJM誌2016年4月21日号(オンライン版2016年4月4日号)掲載の報告。
各単独、併用の3群に無作為化し心血管死・心不全入院の発生を比較
試験は2009年3月13日~13年12月26日に、43ヵ国789センターで8,835例を登録して行われた。単盲検の導入期間後、二重盲検法にて、3群(エナラプリル1日2回5または10mg投与群、アリスキレン1日1回300mg投与群、両薬併用群)のうちの1つに被験者を無作為に割り付けた(エナラプリル単独群2,336例、アリスキレン単独群2,340例、併用群2,340例)。
被験者の適格条件は、NYHA心機能分類II~IV、LVEF35%以下、12ヵ月以内に心不全入院歴のある場合BNP100pg/mL以上、登録時に一定用量でのACE阻害薬投与を受けている(エナラプリル1日10mg投与に相当)またはβ阻害薬投与を受けている患者とした。
主要アウトカムは、心血管死・心不全入院の複合とした。
3群の被験者バランスはとれており、ベースラインで糖尿病を有している患者はより高齢で、糖尿病を有していない患者よりも虚血性心疾患歴を有する割合が高かった。
併用群のベネフィット認められず、複数の有害事象のリスクが上昇
追跡期間中央値36.6ヵ月後、主要複合アウトカムの発生は、併用群770例(32.9%)、エナラプリル単独群808例(34.6%)であった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.03)。また、アリスキレン単独群では791例(33.8%)で(対エナラプリル単独のHR:0.99、95%CI:0.90~1.10)、事前規定の非劣性検定の基準を満たさなかった。
併用群では、エナラプリル群よりも低血圧症のリスク上昇がみられた(13.8% vs.11.0%、p=0.005)。同様に、血清クレアチニン値上昇のリスク(4.1% vs.2.7%、p=0.009)、高カリウム血症のリスク上昇もみられた(17.1% vs.12.5%、p<0.001)。