吸入ステロイド(ICS)でコントロール不良のハウスダストダニ(house dust mite: HDM)アレルギー性喘息に対し、HDMアレルゲン舌下免疫療法(SLIT)が有効かつ安全であることが確認された。HDM舌下錠は、ICS減量期の中等度~重度の喘息増悪を9~10%減少させる。ドイツ・ロストック大学のJ. Christian Virchow氏らが、HDM舌下錠の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果を報告した。HDM舌下錠はHDMアレルギー性鼻炎に対する治療薬として発売されているが、HDMアレルギー性喘息患者において喘息増悪リスクを減少させるかどうかはわかっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「HDM舌下錠はHDMアレルギー性喘息の新たな治療オプションとなりうる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2016年4月26日号掲載の報告。
ダニアレルギー性喘息患者約800例で無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施
研究グループは、2011年8月~2013年4月に、欧州13ヵ国109施設において無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。対象は、HDMアレルギー性鼻炎の1年以上の病歴があり、FEV
1予測値70%以上、過去3ヵ月以内に喘息増悪による入院歴がない、ICS(配合剤を含む)でコントロール不良のHDMアレルギー性喘息患者834例。プラセボ群、6SQ-HDM錠投与(6SQ)群、12SQ-HDM錠投与(12SQ)群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、ICSならびに短時間作用型β
2刺激薬サルブタモールと併用投与した(SQ[standardized quality]とは、HDM舌下錠製品の力価を表すために欧州内で用いられている単位)。
試験は、7~12ヵ月間の介入期と6ヵ月間のICS減量期から成り、ICS減量期では最初の3ヵ月でICSを50%減少、その後3ヵ月間でICSからの離脱を図った。
有効性の評価はICS減量期に行い、主要評価項目は同期間中における初回中等度~重度喘息増悪発生までの期間とした。
HDM舌下錠投与により喘息増悪リスクが有意に減少
無作為化された834例は、平均年齢33歳(範囲17~83歳)、女性48%であった。
プラセボ群(277例)と比較し6SQ群(275例)および12SQ群(282例)で、中等度~重度の喘息増悪のリスクが有意に減少することが認められた。6SQ群のハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~0.99、p=0.045)、12SQ群のHRは0.69(同:0.50~0.96、p=0.03)であった。
介入期に脱落した症例を除いた解析の結果、喘息増悪の絶対リスク差(プラセボ群-HDM群)は、6SQ群0.09(95%CI:0.01~0.15)、12SQ群0.10(95%CI:0.02~0.16)で、6SQ群と12SQ群とで有意差はなかった。
副次的評価項目について、喘息症状の悪化を伴う喘息増悪までの期間は、プラセボ群と比較してHDM群で改善し(6SQ群;HR:0.72、95%CI:0.49~1.02、p=0.11/12SQ群:HR:0.64、95%CI:0.42~0.96、p=0.03)、アレルゲン特異的IgG4は有意に増加した。6SQ群と12SQ群とで、喘息コントロール質問票(asthma control questionnaire:ACQ)または喘息QOL質問票スコアの変化に差はなかった。
主な有害事象は、軽度~中等度の口腔そう痒感(6SQ群13%、12SQ群20%、プラセボ群3%)、口腔浮腫、咽頭刺激感で、重篤な全身性アレルギー反応の報告はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)