ナトリウム(Na)摂取と心血管イベント・死亡リスクとの関連を調べた結果、高血圧の人においてのみ、Na摂取量が多い人は適量摂取の人と比べて同リスクの増大がみられた。正常血圧の人ではそうした関連はみられず、また、Naの低量摂取は高血圧の有無にかかわらず同リスクを増大するとの結果が示されたという。カナダ・Hamilton Health SciencesのAndrew Mente氏らが、4つの大規模な前向き試験(PURE、EPIDREAM、ONTARGET/TRANSCEND)の参加者13万例超のデータをプール解析し、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、減塩は、食塩摂取量の多い高血圧の人が最適なターゲットであることを示唆するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年5月20日号掲載の報告より。
尿中Na排泄量とイベント発生、血圧との関連を調査
解析は、13万3,118例(高血圧6万3,559例、非高血圧6万9,559例)を包含して行われ、被験者は、年齢中央値55歳(IQR:45~63)、49ヵ国から参加していた。
研究グループは、24時間尿中Na排泄量を推算してグループ分けし(3.00g/日未満、3.00~3.99g/日、4.00~4.99g/日、5.00~5.99g/日、6.00~6.99g/日、7.00g/日以上の各群に)、追跡期間中央値4.2年(IQR:3.0~5.0)における死亡・主要心血管疾患イベントの複合アウトカム、および血圧との関連を評価した。
高摂取でリスク増大は高血圧の人だけ
結果、Na摂取と収縮期血圧上昇との関連は、高血圧の人のほうが(2.08mmHg上昇/Na排泄量1分位増大)、非高血圧の人と比べて(1.22mmHg上昇/Na排泄量1分位増大)より、より大きかった(交互作用p<0.0001)。
高血圧の人(イベント発生6,835件)では、Na排泄量最大分位(7.00g/日以上)群および最小分位(3.00g/日未満)群の両群が、排泄量4~5g/日の集団参照値群(高血圧群の25%が該当)と比べて、いずれもイベント発生リスクが有意に高かった。それぞれ発生率は、7.00g/日以上群が11%(7,060件)、ハザード比(HR)1.23(95%信頼区間[CI]:1.11~1.37、p<0.0001)、3.00g/日未満群も11%(7,006件)、HRは1.34(1.23~1.47、p<0.0001)であった。
非高血圧の人(イベント発生3,021件)では、4~5g/日の集団参照値群(同集団の27%が該当)と比べて、7.00g/日以上群における主要複合アウトカムリスクとの関連はみられなかった。同群でのイベント発生率は9%(6,271件)、HRは0.90(0.76~1.08、p=0.2547)であった。一方、3.00g/日未満群では有意なリスク増大がみられた。イベント発生率は11%(7,547例)、HRは1.26(1.10~1.45、p=0.0009)であった。
【訂正のお知らせ】
本文内の表記に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年6月8日)。