前立腺がんにおける遺伝性DNA修復遺伝子の発現について、転移性前立腺がんの患者では11.8%にみられ、限局性前立腺がん患者に比べて有意に高率であることが明らかにされた。米国・フレッド・ハッチンソンがん研究センターのC.C. Pritchard氏らが米国および英国の複数施設から被験者が参加した7つのケースシリーズに包含されていた合計692例の患者について調べ報告した。BRCA2などのDNA修復遺伝子は、致死率の高い前立腺がんリスクの増大と関連していることが知られる。これまで転移性前立腺がん患者の同遺伝子の発現については明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2016年7月6日号掲載の報告。
692例を対象に、20のDNA修復遺伝子について調査
研究グループは、診断時のがん家族歴や年齢および遺伝的背景に関して調整をしていない、転移性前立腺がん患者692例を集めた。生殖細胞DNA(germline DNA)を分離し、マルチシーケンス法を用いて、20個のDNA修復遺伝子の変異を調べ、常染色体優性遺伝性がん素質症候群との関連を調べた。
限局性前立腺がんよりも発現頻度が有意に高率
結果、被験者82例(11.8%)で、合計84個の有害と推定されたgermline DNA修復遺伝子の変異が確認された。変異は16の遺伝子で見つかり、
BRCA2が37例(5.3%)、
ATMが11例(1.6%)、
CHEK2が10例(534例中、1.9%)、
BRCA1は6例(0.9%)、
RAD51Dは3例(0.4%)、
PALB2は3例(0.4%)などであった。なお、変異の頻度は、前立腺がん家族歴の有無や診断時の年齢で差はみられなかった(それぞれp=1.0、p=0.90)。
全体に、DNA修復遺伝子のgermline変異は、限局性前立腺がん患者(その多くで疾患リスクが進行)では4.6%(499例中)であり、また、がんが未診断5万3,105例を包含するExome Aggregation Consortiumにおける同変異の発現は2.7%であり、転移性前立腺がん患者のほうが有意に高率であった(いずれもp<0.001)。
Pritchard C.C. et al. N Engl J Med. 2016 Jul 6. [Epub ahead of print]