心房細動後1年間のアウトカムに大きな地域間格差/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/08/19

 

 心房細動後1年間の死亡率および脳卒中の発症について、カナダ・マックマスター大学のJeff S Healey氏らが47ヵ国の前向きレジストリのデータを分析した。その結果、大きな地域間格差が認められ、臨床変数以外の因子が重大な要因として考えられることが示唆されたという。心房細動は世界中で罹患や死亡の重大な原因となっているが、北米・欧州を除けば入手可能な個人の長期アウトカムデータが、とくにプライマリケアのものについて不足していた。研究グループは、心房細動からの罹患や死亡を減らすことを目的に、世界の異なる地域集団における、脳卒中および幅広く有害アウトカムの発生率を明らかにする検討を行った。Lancet誌オンライン版2016年8月8日号掲載の報告。

世界8地域の心房細動後1年間の死亡・脳卒中例を分析
 研究グループは、病院救急部門を受診し、1次的または2次的診断として心房細動または心房粗動を診断された患者が登録されている47ヵ国の前向きレジストリを活用したコホート研究を行った。

 2007年12月24日~2011年10月21日の間に、コホートに含まれた8つの地域(北米・西欧・オーストラリア、南米、東欧、中東・地中海沿岸、サハラ以南アフリカ、インド、中国、東南アジア)全体において、受診後1年間で1万5,400例の死亡および脳卒中(主要アウトカム)の発生が報告されていた。これらの症例について、北米・西欧・オーストラリアを参照地域とし、他の7地域と比較した。

死亡原因は心不全が30%、脳卒中は8%
 1万5,400例のうち1万5,361例(99.7%)について、フォローアップを完了した。そのうち心房細動後1年以内の死亡は1,758例(11%)で、心房細動の1次的診断患者(377/6,825例、6%)よりも2次的診断患者(1,381/8,536例、16%)のほうが有意に多かった(p<0.0001)。

 死亡について地域別にみると、参照地域(366/3,800例、10%)との比較において、南米(192/1,132例、17%)、アフリカ(225/1,137例、20%)は、約2倍有意に多かった(p<0.0001)。死亡要因は、心不全が最も多く(519/1,758例、30%)、脳卒中は148例(8%)であった。

 心房細動後1年間の脳卒中発症は、604/1万5,361例(4%)で、心房細動の1次的診断患者は170/6,825例(3%)、同2次的診断患者は434/8,536例(5%)と有意な差が認められた(p<0.0001)。

 脳卒中発症を地域別にみると、アフリカ(89/1,137例、8%)、中国(143/2,023例、7%)、東南アジア(88/1,331例、7%)が高率であり、インド(20/2,536例、<1%)が最も低率であった。参照地域は、94/3,800例(3%)であった。

 これらの結果を踏まえて著者は、「脳卒中および死亡発生について認められた不可解な地域間格差は、臨床変数以外に重大な原因があることを示唆するものであった。すなわち、心房細動の治療において最優先すべき重大事項は、心不全による死亡を予防することである」とまとめている。