冠動脈疾患患者への降圧治療、Jカーブリスクに留意が必要/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/09/08

 

 安定冠動脈疾患で降圧治療を受ける患者において、収縮期血圧120mmHg未満、拡張期血圧70mmHg未満と、それぞれ140mmHg以上、80mmHg以上で、死亡を含む有害心血管イベント発生リスクが増大するという「Jカーブ」を描くことが確認された。フランス・パリ第7大学のEmmanuelle Vidal-Petiot氏らが、45ヵ国、約2万3,000人を対象に行った前向きコホート研究の結果、明らかにした。至適降圧目標についてはなお議論の的であり、とくに冠動脈疾患患者では、拡張期血圧が低すぎる場合に心筋の血流低下が起きることが懸念されている。結果を踏まえて著者は、「所見は、冠動脈疾患患者に対する降圧治療は注意深く行うべきことを示すものだった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月26日号掲載の報告。

心血管死、心筋梗塞、脳卒中の心血管イベントと血圧値の関連を分析
 研究グループは、2009年11月~2010年6月にかけて45ヵ国で、安定冠動脈疾患で標準治療を受ける患者が登録されたレジストリ「CLARIFY」を基に、降圧治療を受ける2万2,672例のデータを解析した。

 主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合心血管イベント。収縮期・拡張期血圧値(各イベント前の平均値を10mmHg単位で分類)との関連を分析した。

収縮期血圧120mmHg未満、心血管リスク120~129mmHgの1.6倍
 追跡期間の中央値は5.0年だった。分析の結果、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上において、心血管イベントの発生リスクをそれぞれ有意に増大した。具体的に、収縮期血圧140~149mmHg群は、120~129mmHg群(収縮期参照群)に比べ、心血管イベント発生に関する補正後ハザード比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.32~1.73)、また、150mmHg以上群の同ハザード比は2.48(同:2.14~2.87)だった。拡張期血圧については、80~89mmHg群の70~79mmHg群(拡張期参照群)に対する同ハザード比は1.41(同:1.27~1.57)だった。

 一方で、収縮期血圧120mmHg未満群でも、心血管イベント発生リスクが増大することが示された。収縮期参照群に対する同ハザード比は1.56(同:1.36~1.81)だった。拡張期血圧については、60~69mmHgの拡張期参照群に対する同ハザード比は1.41(同:1.24~1.61)、60mmHg未満は同2.01(同:1.50~2.70)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来