冠動脈疾患に起因しない症候性収縮期心不全患者への予防的植込み型電気除細動器(ICD)の施行は、通常ケアと比較して、長期的な全死因死亡の低下には結び付かないことが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Kphiber氏らが、556例を対象に行った無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年8月27日号で発表した。同患者への予防的ICDについては、これまでサブグループ解析によるエビデンスが主であった。
1,116例を対象に予防的ICD vs.通常ケア
心不全の治療管理は画期的であったICD開発以降改善され、現在多くの患者が心臓再同期療法(CRT)を受けている。研究グループは、ICDの有益性について、冠動脈疾患起因の症候性収縮期患者への施行については十分に検討されているが、非虚血性収縮期心不全患者への予防的ICDについてはエビデンスが限定的だとして、同患者を対象とした無作為化試験を行った。
被験者は、非虚血性収縮期心不全(左室駆出率35%以下)でNYHA心機能分類IIまたはIII(CRT施行予定例ではIV)を有する症候性患者で、2008年2月7日~2014年6月30日に1,116例が登録され、1対1の割合で、ICDを受ける群(556例)と対照(通常ケア)群(560例)に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは全死因死亡。副次アウトカムは、突然死、心血管死などであった。
追跡67.6ヵ月後、全死因死亡の発生は有意差なし
両群とも、58%の患者がCRTを受けていた。
追跡期間中央値67.6ヵ月後において、主要アウトカムの発生は、ICD群120例(21.6%)、対照群131例(23.4%)で、有意な差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]、0.68~1.12、p=0.28)。
副次アウトカムの突然死は、ICD群24例(4.3%)、対照群46例(8.2%)で有意差が認められた(HR:0.50、95%CI:0.31~0.82、p=0.005)。心血管死は、77例(13.8%)と95例(17.0%)で有意差は認められなかった(0.77、0.57~1.05、p=0.10)。
安全性について、装置関連感染症はICD群27例(4.9%)、対照群20例(3.6%)で有意差はみられなかった(p=0.29)。ただしCRT非施行患者でみると、ICD群で同リスクが有意に高率であった(HR:6.35、95%CI:1.38~58.87、p=0.006)。