TAVR後の感染性心内膜炎、リスク因子と転帰は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2016/09/26

 

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、若年、男性、糖尿病、中等度~重度大動脈弁逆流残存は、感染性心内膜炎(IE)のリスク増加と有意に関連しており、心内膜炎を発症した患者は院内死亡率および2年時死亡率が高いことが明らかとなった。カナダ・ラヴァル大学のAnder Reguerio氏らが、TAVR後にIEと確定診断された患者を対象とした後ろ向き観察研究の結果、報告した。外科的弁置換術はIE発症や死亡率の高さと関連が示唆されているが、TAVRについては症例数の少なさや追跡期間の短さなどにより、術後IE患者の臨床的特徴や転帰に関するデータは限られていた。JAMA誌2016年9月13日号掲載の報告。

TAVR施行患者約2万人を後ろ向きに調査、IE発症率は1.1%/人年
 研究グループは、TAVR後IEに関連する因子、臨床的特徴および転帰を検討する目的で、2005年6月~2015年10月に欧州・北米・南米47施設においてTAVRが実施された2万6例について調査し、TAVR後IE発症率およびIEによる院内死亡率を評価した。

 TAVR後にIEを発症し確定診断がなされた患者は2万6例中250例で、発症率は1.1%/人年(95%信頼区間[CI]:1.1~1.4%)、年齢中央値は80歳、男性が64%であった。また、TAVR施行からIE発症までの期間は、中央値で5.3ヵ月(四分位範囲:1.5~13.4)であった。

TAVR後IE患者の院内死亡率は36%、院内死亡の予測因子は心不全
 TAVR後IE発症の高リスク患者特性は、年齢が若い(IE有:78.9歳 vs.IE無:81.8歳、ハザード比[HR]:年当たり0.97、95%CI:0.94~0.99)、男性(62.0% vs.49.7%、HR:1.69、95%CI:1.13~2.52)、糖尿病(41.7% vs.30.0%、HR:1.52、95%CI:1.02~2.29)、中等度~重度大動脈弁逆流(22.4% vs.14.7%、HR:2.05、95%CI:1.28~3.28)であった。医療関連IE(入院後48時間以内、または入院前に何らかのケアを受けており入院時の血液培養で陽性反応)は、52.8%(95%CI:46.6~59.0%)で確認された。主な起炎菌は腸球菌(24.6%、95%CI:19.1~30.1%)および黄色ブドウ球菌(23.3%、95%CI:17.9~28.7%)であった。

 IE患者250例中、入院中に90例が死亡し、院内死亡率は36%(95%CI:30.0~41.9%)であった。14.8%の患者にはIEに対し外科手術が行われた(95%CI:10.4~19.2%)。院内死亡は、logistic EuroSCORE高値(23.1% vs.18.6%、オッズ比[OR]:1%増加当たり1.03、95%CI:1.00~1.05)、心不全(59.3% vs.23.7%、OR:3.36、95%CI:1.74~6.45)、急性腎不全(67.4% vs.31.6%、OR:2.70、95%CI:1.42~5.11)と関連していた。2年時死亡率は66.7%(95%CI:59.0~74.2%、死亡132例、生存115例)であった。

(医療ライター 吉尾 幸恵)