肥満者の減量法として、標準的な生活様式への行動療法的介入に、食事や身体活動を監視してフィードバックを提供する装着型デバイス(wearable device)を加えても、減量効果はむしろ低下することが、米国・ピッツバーグ大学のJohn M Jakicic氏らが行ったIDEA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。食事療法や身体活動を強化する介入の短期的な減量効果が確認され、この効果の長期的な維持が課題とされる。標準的な介入への装着型デバイスの追加により、長期的な減量効果が改善する可能性が示唆されている。
若年成人肥満者で装着型デバイスの減量効果を検討
IDEAは、若年成人の肥満者において、標準的な行動療法的介入への装着型デバイスの併用による減量の改善効果を検討する無作為化試験(米国国立衛生研究所[NIH]および米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。
参加者の登録は、2010年10月~2012年10月にピッツバーグ大学で行った。対象は、年齢18~35歳、BMI 25.0~<40.0であり、テキストメッセージの受信が可能な携帯電話と、インターネットに接続できるコンピュータにアクセス可能な者とした。
すべての参加者は、低カロリー食を摂り、身体活動を所定のとおりに増量し、グループカウンセリング研修を受けた。6ヵ月後に、電話カウンセリング研修、テキストメッセージによる指示、ウェブサイト上の教材へのアクセスが加えられた。
6ヵ月時に、ウェブサイトを使用して食事および身体活動を自己監視する標準的な行動療法的減量介入を行う群(標準介入群)、または食事および身体活動の監視にはウェブベースのインターフェイスを備えた装着型デバイス(FIT Core、Body Media社)を用いる強化減量介入を行う群(強化介入群)に無作為に割り付けられた。介入は、24ヵ月時まで、18ヵ月間行われた。
体重減少が2.4kg少ない、食事、身体活動に差はない
470例が登録され、強化介入群に237例、標準介入群には233例が割り付けられた。全体の年齢中央値は30.9歳、女性が71.1%、非白人が22.8%であり、体重中央値は90.0kg、BMI中央値は31.2であった。
74.5%が試験を完遂した。試験期間中に、29例の女性が妊娠し、安全のために介入を中止した。
強化介入群の推定平均体重は、ベースライン時が96.3kg(95%信頼区間[CI]:94.2~98.5)、24ヵ月時は92.8kg(90.6~95.0)であり、体重は3.5kg(2.6~4.5)減少した。これに対し、標準介入群は、推定平均体重が95.2kg(93.0~97.3)から89.3kg(87.1~91.5)へ、5.9kg(5.0~6.8)減少した。
したがって、24ヵ月時の体重減少量は、強化介入群が標準介入群よりも2.4kg(95%CI:1.0~3.7)少なかった(p=0.002)。
事後解析として、体重減少率(推定平均値)の評価を行ったところ、6ヵ月時(強化介入群:8.4 vs.標準介入群:9.4%、p=0.15)には両群間に差はなかったが、12ヵ月時(7.0 vs.8.9%、p=0.008)、18ヵ月時(5.6 vs.7.9%、p=0.002)、24ヵ月時(3.6 vs.6.4%、p<0.001)は、いずれも強化介入群が標準介入群に比べ有意に低かった。
BMI、体組成(体脂肪量、除脂肪量、体脂肪率、組織体脂肪率[骨を除いた体脂肪率]、骨量)、心肺持久力(電動トレッドミル)、身体活動(坐位、軽度な活動[運動強度指数[MET]:1.5~<3.0]、10分以上の中等度~高強度の活動[MET≧3.0])、食事(総カロリー、炭水化物、タンパク質、脂肪)は、両群とも有意に改善し、いずれも両群間に差を認めなかった。
安静時血圧、うつ状態、急速な体重減少(4週間に6%以上の減量)、重篤でない有害事象、重篤な有害事象の発現数には、両群間に有意な差はなかった。
著者は、「強化介入群の減量効果が劣った原因は、装着型デバイスが食事および身体活動の行動を改善しなかったためと考えられるが、これらの測定値には有意差がないことから、その原因の解明のためにさらなる検討を要する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)