低比重リポ蛋白(LDL)にアポリポ蛋白(a)(apo[a])が結合したリポ蛋白(a)(Lp[a])の増加は、心血管疾患および石灰化大動脈弁狭窄症の遺伝的リスク因子であることが知られている。現在、apo(a)を標的としたオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)Rxと、肝細胞に高度かつ選択的に取り込まれるようデザインされたリガンド結合アンチセンスオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)-LRxが開発中であるが、とくに後者がLp(a)濃度を低下させる有効かつ忍容性のある新しい治療薬として有望であることが明らかとなった。米国・Ionis PharmaceuticalsのNicholas J Viney氏らが、IONIS-APO(a)Rxの第II相試験とIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相試験の2件の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。IONIS-APO(a)Rxの健常成人を対象とした第I相試験では、用量依存的に血漿Lp(a)濃度が減少することが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2016年9月21日号掲載の報告。
IONIS-APO(a)Rxの100~300mg投与でLp(a)濃度が約70%低下
まずIONIS-APO(a)Rxの第II相試験は、カナダ、オランダ、ドイツ、デンマーク、英国の13施設で実施された。2014年6月25日~2015年11月18日に、Lp(a)濃度が異なる2つのコホート(A[125~437nmol/L]51例、B:[≧438nmol/L]13例)の計64例を、IONIS-APO(a)Rx皮下投与用量漸増群(4週間ごとに週1回100mg、200mg、300mgと増量)またはプラセボ(生理食塩水)投与群(週1回12週間)に、コホートAは1対1、コホートBは4対1の割合で無作為に割り付けた(IONIS-APO(a)Rx群計35例、プラセボ群計29例)。
主要評価項目であるper-protocol集団(6回以上治験薬の投与を受けた被験者)における85日または99日時点での空腹時血漿Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率(平均±標準偏差[SD])は、IONIS-APO(a)Rx群のコホートAで-66.8±20.6%、コホートBで-71.6±13.0%であった(いずれもp<0.0001 vs.プラセボ(コホートA+B)群)。
IONIS-APO(a)-LRx 40mg投与でLp(a)濃度が約90%低下
次にIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相ヒト初回投与試験は、カナダ・トロントのBiopharma Servicesの第I相部門で実施された。2015年4月15日~2016年1月11日に、健常者(Lp[a]≧75nmol/L)58例が登録され、単回投与試験でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg、80mg、120mg)またはプラセボ群に3対1の割合で、反復投与試験(第1・3・5・8・15・22日の6回投与)でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg)またはプラセボ群に8対2の割合で、それぞれ無作為に割り付けた(単回投与試験計28例:10mg群3例、20mg群3例、40mg群3例、80mg群6例、120mg群6例、プラセボ群7例/反復投与試験計30例:10mg群8例、20mg群8例、40mg群8例、プラセボ群6例)。
主要評価項目の解析対象集団は、無作為化されかつ治験薬の投与を最低1回以上受けた被験者であった。結果、単回投与試験では、IONIS-APO(a)-LRxのすべての用量群で主要評価項目である30日時点の平均Lp(a)濃度の用量依存的な有意な減少が認められた。一方、反復投与試験では、主要評価項目である36日時点での平均Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率が10mg群-66±21.8%、20mg群-80±13.7%、40mg群-92±6.5%であった(p=0.0007、IONIS-APO(a)-LRx全体 vs.プラセボ群)。
安全性については、どちらのアンチセンスオリゴヌクレオチドでも確認された。第II相試験において重篤な有害事象(心筋梗塞)がIONIS-APO(a)Rx群で1例、プラセボ群で1例確認されたが、治験薬に関連するものではないと判断された。注射部位反応がIONIS-APO(a)Rxでは12%に認められたが、IONIS-APO(a)-LRxでは確認されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)