家族性高コレステロール血症、親子への検診は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/09

 

 プライマリケア診療での定期予防接種時に、親子に家族性高コレステロール血症(FH)のスクリーニングを実施することは可能であり、有効であることが、英国・ロンドン大学クィーンメアリー校のDavid S Wald氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年10月27日号に掲載された。遺伝性の若年性心血管疾患の高リスク者を同定するために、親子へのFHのスクリーニングが提唱されているが、有効性に関するデータは少ないという。

約1万人の子で、親子スクリーニングの実行可能性を検証
 研究グループは、プライマリケア診療における親子へのFHのスクリーニングの有効性と実行可能性を検討した(英国医学研究協議会[MRC]の助成による)。

 定期予防接種の受診時に、1~2歳児の末梢血検体を採取し、コレステロール値の測定とFHの発症に関連する遺伝子変異の検査を行った。

 子は、コレステロール値が高く、かつFHの遺伝子変異を認めるか、あるいは3ヵ月後の再測定でもコレステロール値が高い場合に、FHスクリーニングが陽性と判定された。

 スクリーニング陽性の子の親は、子と同じ遺伝子変異が同定された場合にスクリーニング陽性と判定され、変異がみられない場合は、両親のうちコレステロール値が高い親が陽性と判定された。

 コレステロール値のカットオフ値は、メタ解析のデータに基づき事前に、中央値の倍数(MoM)で1.53MoM(99.2パーセンタイルに相当)と規定された。

 2012年3月~2015年3月に、英国の92のプライマリケア施設に登録された子1万95人が解析の対象となった。

子1,000人のスクリーニングで8人(子4人、親4人)が陽性
 ベースラインの子の年齢中央値は12.7ヵ月(IQR:12.4~13.3)、男児が52%で、総コレステロール(T-C)値は152mg/dL、LDL-C値は85mg/dL、HDL-C値は36mg/dL、トリグリセライド値は59mg/dLであった(いずもれも中央値)。両親の年齢中央値は、母親が31歳(IQR:27~35)、父親は34歳(同:30~38)だった。

 FHスクリーニング陽性と判定された子は28人(1万95人の0.3%、95%信頼区間[CI]:0.2~0.4)であった。このうち、FHの遺伝子変異の保因者が20人、再測定コレステロール値≧1.53MoMは8人であった。

 コレステロール値<1.53MoMの子17人にも、FHの遺伝子変異がみられた。全体の遺伝子変異の保因率は子273人に1人(37/10,095人、95%CI:1/198~1/388人)の割合であった。

 初回測定時のコレステロール値のカットオフ値を1.35MoM(95パーセンタイル)とし、かつ遺伝子変異が認められる場合、あるいは測定値が2回とも1.50MoM(99パーセンタイル)以上の場合にスクリーニング陽性とすると、陽性と判定された子は40人(1万95人の0.4%、このうちFHの遺伝子変異ありが32人、なしは8人)であり、親も40人が陽性であった。

 著者は、「子1,000人当たり8人(子4人、親4人)の割合で、家族性高コレステロール血症スクリーニングが陽性であり、それゆえ心血管疾患のリスクが高い者が同定された」とまとめ、「家族性高コレステロール血症は、単独の疾患というよりも、早期の心血管疾患リスクの上昇を示すマーカーとみなすほうがよいことが示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)