薬剤溶出ステント留置術を要す冠動脈疾患に対する、極薄型ストラット生分解性ポリマー・エベロリムス溶出ステントまたはシロリムス溶出ステントは、耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出ステントと比較し、術後1年後のアウトカムについて、非劣性であることが示された。オランダ・Thoraxcentrum TwenteのClemens von Birgelen氏らが行った、大規模無作為化比較試験「BIO-RESORT」の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月30日号掲載の報告。
1年後の心臓死・標的血管関連心筋梗塞の発生率などを比較
BIO-RESORT試験は、2012年12月21日~2015年8月24日にかけて、オランダ国内4つのクリニックにて、冠動脈疾患で薬剤溶出ステント留置術を要する18歳以上の患者3,514例を対象に行われた。除外基準は、主要エンドポイント達成前に、他の割付治療(薬物またはデバイス)を受けた場合、施術後6ヵ月以内に抗血小板薬2剤併用療法の中断が予定されている場合、割付治療薬剤や関連薬剤(抗凝固療法や抗血小板療法など)に対する既知の不耐性が認められる場合、フォローアップ治療へのアドヒアランスまたは1年未満の推定予後が不確定な場合、妊娠が明らかな場合だった。
被験者はコンピュータ無作為化にて3つの群に割り付けられ、1群には極薄型ストラット・エベロリムス溶出ステントを、2群には極薄型ストラット・シロリムス溶出ステントを3群には薄型ストラット・耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出ステントを、それぞれ留置した。
主要評価項目は、12ヵ月後の安全性(心臓死または標的血管関連の心筋梗塞の発症)および有効性(標的血管再建術の実施)の複合エンドポイントで、生分解性ポリマーを用いた2つの群と、耐久性ポリマー・ゾタロリムス群を比較した。非劣性マージンは3.5%だった。
主要評価項目発生率、いずれの群も5%
被験者のうち、70%(2,449例)が急性冠症候群で、31%(1,073例)がST上昇型心筋梗塞の患者だった。
検討の結果、主要評価項目の発生率は、エベロリムス群が5%(55/1,172例)、シロリムス群が5%(55/1,169例)に対し、ゾタロリムス群は5%(63/1,173例)だった。ゾタロリムス溶出ステント群に対して、極薄型ストラット・生分解性ポリマーを用いたエベロリムスおよびシロリムスの両ステントの非劣性が示された(絶対リスク差:両群とも-0.7%、95%信頼区間:-2.4~1.1、非劣性のp<0.0001)。
学術研究コンソーシアム(Academic Research Consortium)の定義による確定的ステント血栓症は、エベロリムス群は4例(0.3%)、シロリムス群は4例(0.3%)、ゾタロリムス群は3例(0.3%)の発生だった(log-rank検定によるゾタロリムス群と他2つの群との比較のp=0.70)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)