1975~2015年の世界200ヵ国における血圧値の動向を調べたところ、血圧高値の傾向は高所得国から低所得国へ移行したことが認められた。しかし、南アジア、サハラ以南アフリカ諸国の最貧集団では血圧高値の増加傾向はみられず、また中央・東欧諸国では血圧高値が継続していることが示された。世界200ヵ国の非感染性疾患(NCD)について調査を行っている科学者ネットワーク「NCD Risk Factor Collaboration」(NCD-RisC)が、1,479試験を基に分析し明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2016年11月15日号で発表した。
被験者総数1,910万例を階層ベイズモデルで分析
研究グループは、18歳以上について血圧を測定した1,479試験、被験者総数1,910万例のデータについて、階層ベイズモデルを用い、1975~2015年の世界の平均収縮期・拡張期血圧値と、200ヵ国における高血圧症の有病率を推定した。
高血圧症の定義としては、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上とした。
2015年の世界の高血圧症有病率、男性24%、女性20%
その結果、2015年の年齢調整平均収縮期血圧は、男性が127.0mmHg(95%信頼区間[CI]:125.7~128.3)で、女性は122.3mmHg(同:121.0~123.6)、年齢調整平均拡張期血圧は、男性が78.7mmHg(同:77.9~79.5)、女性が76.7mmHg(同:75.9~77.6)だった。
2015年の世界の年齢調整高血圧症有病率は、男性が24.1%(同:21.4~27.1)、女性が20.1%(同:17.8~22.5)だった。
1975~2015年に、西欧・環太平洋の高所得国では平均収縮期・拡張期血圧値が大幅に低下していた。これらの国のいくつかは、1975年には血圧値が最も高かったが、2015年には最も低くなっていた。なお、収縮期血圧値の低下が最も大きかったのは、環太平洋の高所得国で、女性3.2mmHg(95%CI:2.4~3.9)、男性は2.4mmHg(同:1.6~3.1)低下が認められた。拡張期血圧については西欧の高所得地域で最も大きかった。
女性の平均血圧値については、中央・東欧、ラテンアメリカ、カリブ海諸国でも低下し、より最近になって、中央アジア、中東、北アフリカ諸国でも同じく低下が認められたが、これら地域の傾向は高所得国における低下傾向のように確定性は高くなかった。対照的に、東・東南アジア、南アジア、オセアニア、サハラ以南のアフリカ諸国では平均血圧値の上昇が認められた。
2015年に最も血圧値が高かったのは、中央・東欧、サハラ以南アフリカ、南アジアの諸国だった。
高血圧症の有病率は、高所得国と一部の中所得国で低下傾向が見られたものの、その他の国では変化はみられなかった。
1975~2015年の間に、高血圧症の人の数は5億9,400万人から11億3,000万人に増え、低・中所得国で大きな増加が認められた。世界の高血圧症の増加は、人口増加と高齢化による増加と、年齢別罹患率の低下による減少を総合した結果と考えられた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)