妊娠24週以降にn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を摂取することで、出生児の持続性喘鳴または喘息、および下気道感染症のリスクが絶対値で約7%、相対的には31%低下することが明らかになった。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らが、妊娠中のn-3系LUPUFA摂取が出生児の持続性喘鳴または喘息リスクに及ぼす効果を検討した単施設二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。n-3系LCPUFAの摂取不足は、喘鳴性疾患の有病率増加に寄与している可能性がある。これまで、観察研究では妊娠中のn-3系LCPUFA摂取不足と出生児の喘息・喘鳴性疾患のリスク増加との関連が示唆されていたが、無作為化比較試験は検出力が低く結果は不確かであった。NEJM誌2016年12月29日号掲載の報告。
妊娠24週以降毎日魚油 vs.オリーブ油摂取、出生児695例を5年間追跡
研究グループは2008年11月~2010年11月の間に、妊娠24週の妊婦736例をn-3系LCPUFA(魚油:55%エイコサペンタエン酸[EPA]、37%ドコサヘキサエン酸[DHA])2.4g/日を摂取する群(魚油群)と、プラセボ(オリーブ油)を摂取する対照群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ出産後1週まで毎日摂取してもらい、対象から生まれた児をコペンハーゲン小児喘息前向き研究2010(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood2010:COPSAC2010)のコホートとして5年間前向きに追跡調査した。最初の3年間は二重盲検で、その後2年間は担当医のみ盲検とした。
主要評価項目は、持続性喘鳴または喘息(満3歳に達するまでは「持続性喘鳴」、その後は「喘息」)、副次評価項目は下気道感染症、喘息増悪、湿疹、アレルギー感作などであった。
最終的に、本研究には新生児695例が登録され、95.5%が3年の二重盲検追跡期間を完遂した。
持続性喘鳴・喘息リスクはオリーブ油に比べ魚油摂取で約31%低下
持続性喘鳴または喘息のリスクは、対照群23.7%に対し魚油群は16.9%(ハザード比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.49~0.97、p=0.035)で、相対的に30.7%低下した。事前に規定されたサブグループ解析では、無作為化時におけるEPA+DHAの血中濃度が低い母親(下位3分の1:血液中の総脂肪酸に対する割合として4.3%未満の集団)から生まれた児で、効果が最も大きいことが示された(対照群34.1%、魚油群17.5%、ハザード比:0.46、95%CI:0.25~0.83、p=0.011)。
副次評価項目では、n-3系LCPUFA摂取と下気道感染症のリスク低下との関連性が示唆されたが(対照群39.1%、魚油群31.7%、ハザード比:0.75、95%CI:0.58~0.98、p=0.033)、喘息増悪、湿疹、アレルギー感作については有意な関連は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)