HER2陽性早期乳がんに対し、補助療法としてのトラスツズマブ投与は、無病生存期間を長期とする改善効果が、中央値11年間の追跡で確認された。投与期間については、2年投与は1年投与と比べ追加ベネフィットは認められなかった。英国・エディンバラ大学がん研究センターのDavid Cameron氏らが国際共同多施設非盲検第III相無作為化試験「HERA(HERceptin Adjuvant)」の最終解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2017年2月16日号掲載の報告。
39ヵ国、5,102例の患者を対象に試験
HERA(BIG 1-01)試験は2001~05年にかけて、39ヵ国の医療機関を通じHER2陽性早期乳がんの患者5,102例を対象に行われた。手術や化学療法、放射線療法などの乳がんに対する1次治療を行った後、研究グループは被験者を無作為に3群に分け、トラスツズマブ1年投与(初回投与量8mg/kg体重、その後6mg/kg体重を3週ごとに静脈内投与)、トラスツズマブ2年投与(1年投与と同様の投与スケジュール)、トラスツズマブ非投与(観察群)をそれぞれ行った。
主要エンドポイントは無病生存期間(DFS)で、ITT集団で解析した。Coxモデルでハザード比(HR)を算出し、Kaplan-Meier法で生存曲線を算出した。トラスツズマブ1年投与群と2年投与群との比較は、366日ランドマーク解析で検証した。
DFSに関するハザード比、トラスツズマブ1年群で0.76
被験者のうち追跡可能だったのは5,099例(1年投与群1,702例、2年投与群1,700例、観察群1,697例)だった。追跡期間の中央値は11年(四分位範囲:10.09~11.53)だった。また、本試験では観察群に割り付けられた患者の884例(52%)は、選択的クロスオーバーでトラスツズマブも受けていた。
解析の結果、1年投与群は観察群と比較して、DFS(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.86)、死亡(同:0.74、0.64~0.86)のリスクの有意な減少が認められた。
2年投与群は1年投与群と比較してDFSのアウトカム改善は認められず(HR:1.02、同:0.89~1.17)、長期投与ベネフィットのエビデンスは認められなかった。
10年DFSの推定達成率は、観察群が63%、トラスツズマブ1、2年投与群は共に69%だった。
心毒性はすべての群で低率にとどまった。副次的心エンドポイントの発生は、2年投与群が7.3%と、1年投与群(4.4%)および観察群(0.9%)に比べ頻度が高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)