看護師主導の新たなケアモデル「Stepping Upモデル」により、プライマリケアにおけるインスリン導入率が増加し、精神的安定が維持されHbA1cが改善することが示された。オーストラリア・メルボルン大学のJohn Furler氏らが、2型糖尿病患者のインスリン導入標準化と血糖コントロール改善のため、Stepping Upモデルの有効性を通常ケアと比較した無作為化試験の結果、報告した。2型糖尿病において早期に血糖コントロール目標を達成し維持することは、長期予後を改善するが、プライマリケアにおいては段階的な治療の強化、とくにインスリン導入に対する障壁があり、介入には限界があった。BMJ誌2017年3月8日号掲載の報告。
一般診療所74施設の2型糖尿病患者266例で検証
研究グループは、適格基準(1人以上の医師および診療所看護師が研究に同意しており、同意を得た適格患者が1人以上いること)を満たしたオーストラリア・ビクトリア州の一般診療所計74施設において、12ヵ月間のクラスター無作為化比較試験を実施した。
対象は、最大用量の経口血糖降下薬(2剤以上)で治療を行うも血糖コントロール不良(HbA1c≧7.5%)の2型糖尿病患者266例(平均クラスターサイズ4例[範囲:1~8例])を、ブロックランダム化法によりStepping Upモデルによる介入群(36施設、151例)と通常ケアを行う対照群(38施設、115例)に無作為に割り付けた。Stepping Upモデルには、理論に基づいた診療システムの施行や、プライマリケア糖尿病チームにおける医療従事者の役割再教育などが含まれた。中核を成したのは、インスリン導入における診療所看護師の役割強化と、糖尿病教育資格を持つ専門看護師による教育であった。
主要評価項目は、HbA1cの変化、副次評価項目は治療をインスリンに変更した患者割合、HbA1c目標値を達成した患者割合、抑うつ症状(患者健康質問票:PHQ-9)や糖尿病特異的心理負担(糖尿病問題領域質問票:PAID)および一般的健康状態(QOL評価法:AQoL-8D)の変化などであった。
12ヵ月後のインスリン導入率は対照群22%、介入群70%、HbA1cも有意に改善
HbA1cは両群とも改善したが、臨床的に有意な群間差が認められ、介入群のほうが良好であった(平均差:-0.6%、95%信頼区間[CI]:-0.9~-0.3%、p<0.001)。12ヵ月時にインスリンを開始していた患者は、介入群が151例中105例(70%)、対照群が115例中25例(22%)であり(オッズ比[OR]:8.3、95%CI:4.5~15.4、p<0.001)、HbA1c7%以下目標を達成した患者は介入群54例(36%)に対し対照群22例(19%)であった(OR:2.2、1.2~4.3、p=0.02)。
両群とも12ヵ月時に抑うつ症状の悪化は認められなかった(PHQ-9変化量[平均±SD]:-1.1±3.5 vs.-0.1±2.9、p=0.05)。しかし、メンタルヘルスに関しては有意差が認められ、介入群のほうが良好であった(精神的側面のAQoLサマリースコア変化量:0.04±0.16 vs.-0.002±0.13、平均差:0.04[95%CI:0.002~0.08]、p=0.04)。
身体的健康(身体的側面のAQoLサマリースコア変化量:0.03±0.15 vs.0.02±0.13)、糖尿病特異的心理負担(5.6±15.5 vs.-2.4±15.4)に関しては、差は認められなかった。また、重度の低血糖イベントの報告はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)