親が早期発症高血圧だと子の高血圧リスクも高い/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/05/31

 

 早発型の高血圧は、晩発型の高血圧に比べ心血管死のリスクが高く、子の高血圧の発症リスクも上昇することが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のTeemu J. Niiranen氏らフラミンガム心臓研究グループの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年5月12日号に掲載された。若年者および高齢者の高血圧は心血管疾患の重大なリスクであることが知られているが、高血圧を発症時期で早発型と晩発型に分けることの妥当性については十分なデータがないという。

発症時期別の心血管死、子の高血圧のリスクを検討
 研究グループは、子の高血圧のリスク因子としての、親の高血圧の発症時期の影響を評価するために、2世代にわたる前向きコホート研究を実施した(米国心臓協会[AHA]と米国NHLBIによるフラミンガム心臓研究の研究助成などを受けた)。

 対象は、フラミンガム心臓研究の参加者で、60年間にわたり継続的に血圧測定検査を受けた親子2世代の地域住民参加者であった。死亡データがある第1世代の3,614例と、親の血圧データがあり、ベースライン時に高血圧がみられなかった第2世代の1,635例が解析に含まれた。主要評価項目は、親の早発型高血圧(55歳未満で発症)と子の高血圧発症の関連、および高血圧発症時期と原因別死亡(心血管死 vs.非心血管死)の関連であった。

 ベースライン時の子の世代は、親に高血圧がみられない群が107例(平均年齢33.3歳、女性52.3%)、片親または両親が晩発型高血圧の群が480例(32.9歳、55.0%)、片親が早発型高血圧の群が721例(31.6歳、53.8%)、両親が早発型高血圧の群は327例(31.6歳、56.0%)であった。平均追跡期間26(SD 9)年の間に、子の世代の29.4%(481/1,635例)が高血圧を発症した。

片親が早期発症で子のリスクが2倍、両親では3.5倍に
 子の世代では、親が非高血圧の群と比較して、片親または両親が晩発型高血圧の群では高血圧のリスクに有意な差はなかった(多変量補正モデルによるハザード比[HR]:1.5、95%信頼区間[CI]:0.9~2.7)のに対し、片親が早発型高血圧の群(2.0、1.2~3.5、p<0.05)および両親が早発型高血圧の群(3.5、1.9~6.1、p<0.001)では、いずれも高血圧の発症リスクが有意に高かった。

 親の世代の死亡者のうち1,151例の死因が心血管死であり、このうち630例が冠動脈性心疾患死であった。また、心血管死のオッズは、高血圧の発症年齢が若くなるに従って、直線的に上昇した(傾向検定:p<0.001)。非高血圧群と比較して、高血圧の発症時期が45歳未満の群は心血管死のオッズ比(OR)が2.2(1.8~2.7、p<0.001)、冠動脈性心疾患死のORは2.3(1.8~2.9、p<0.001)であったのに対し、65歳以上で発症した群のORはそれぞれ1.5(1.2~1.9、p=0.001)、1.4(1.0~1.9、p=0.07)と低くなっており、いずれも高血圧発症時期が45歳未満のほうが65歳以上よりも有意にORが高かった(p≦0.002)。

 著者は、「高血圧の発症年齢は、血圧上昇の遺伝的素因を反映し、さらに個々の患者の心血管リスクの評価において重要な予測的情報の提供もするという、2つの特性を持つことが示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 有馬 久富( ありま ひさとみ ) 氏

福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 教授

J-CLEAR会員