肥満高齢者に対し食事による減量プログラムと運動療法を行う際、有酸素運動と筋力トレーニングを併せて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示された。米国・ベイラー医科大学のDennis T. Villareal氏らが、160例の高齢者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月18日号で発表した。肥満はフレイルの原因となるが、減量は加齢に伴う筋量および骨量の低下を加速させ、結果としてサルコペニアやオステオペニアを生じさせるのではと指摘されていた。
有酸素運動、筋力トレーニングとその併用を比較
研究グループは、肥満高齢者160例を対象に、減量によるフレイルからの回復や筋量・骨量の減少予防に資する、より効果的な運動の種類について検証した。
被験者を無作為に4群に分け、うち3群は減量プログラムとともにそれぞれ1)有酸素運動、2)筋力トレーニング、3)有酸素運動と筋力トレーニングを併用した。4)対照群には減量プログラムも運動療法も行わなかった。
主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後の、身体機能テスト(Physical Performance Test:0~36点で、高いほど身体機能が良好)の点数の変化とした。副次的評価項目は、その他のフレイルに関する指標、骨密度、身体機能の変化などとした。
除脂肪体重の減少、有酸素運動群で5%と最大
被験者のうち試験を完了したのは141例(88%)だった。
身体機能テストのスコア変化は、1)有酸素運動群が14%(29.3から33.2点に)増加、2)筋トレ群が14%(28.8から32.7点に)増加だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群は21%(27.9から33.4点に)増加と、より大幅に上昇した(それぞれボンフェローニ補正後、p=0.01、p=0.02)。また、すべての運動群は対照群と比べ、同点数が大幅に増加した(いずれもp<0.001)。
最大酸素消費量は、3)有酸素運動+筋トレ群(17%増)と1)有酸素運動群(18%増)が、2)筋トレ群(8%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。
筋力については、3)有酸素運動+筋トレ群(18%増)と2)筋トレ群(19%増)が、1)有酸素運動群(4%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。体重は、すべての運動群で9%減少したのに対し、4)対照群では有意な変化は認められなかった。
一方、除脂肪体重は、1)有酸素運動群では5%低下だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ3%低下、2%低下と、減少率はより小幅にとどまった(いずれもp<0.05)。股関節骨密度低下についても同様に、1)有酸素運動群が3%低下に対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ1%低下、0.5%低下にとどまった(いずれもp<0.05)。
運動関連の有害事象は、筋骨格損傷などが報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)