早期HER2陽性乳がん患者に対し、術後補助化学療法+トラスツズマブに加え、ペルツズマブ(商品名:パージェタ)を投与することで、3年無浸潤疾患生存率は有意に改善したことが報告された。とくにリンパ節陽性患者で、同生存率の改善が示された。ドイツ・GBG ForschungsのGunter von Minckwitz氏らAPHINITY研究グループが、43ヵ国549ヵ所の医療機関を通じて行ったプラセボ対照無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月5日号で発表した。
HER2陽性乳がん患者4,805例を対象に試験
Minckwitz氏らは、リンパ節陽性、またはハイリスク・リンパ節陰性で手術可能なHER2陽性の乳がん患者4,805例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、標準補助化学療法+トラスツズマブの1年間投与に加え、一方の群にはペルツズマブを(2,400例)、もう一方の群にはプラセボを(2,405例)それぞれ投与し、臨床アウトカムを比較した。研究グループが仮定した3年無浸潤疾患生存率は、ペルツズマブ群91.8%、プラセボ群89.2%だった。
リンパ節陽性では3年無浸潤疾患生存が改善
追跡期間の中央値は、45.4ヵ月だった。被験者のうち、リンパ節陽性は63%、ホルモン受容体陰性は36%だった。
追跡期間中に再発が認められたのは、プラセボ群8.7%(210例)に対し、ペルツズマブ群は7.1%(171例)だった(ハザード比:0.81、95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)。推定3年無浸潤疾患生存率は、プラセボ群が93.2%に対し、ペルツズマブ群は94.1%だった。
被験者のうちリンパ節陽性グループでは、3年無浸潤疾患生存率はプラセボ群が90.2%、ペルツズマブ群が92.0%だった(浸潤疾患発症ハザード比:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.02)。これに対してリンパ節陰性グループの3年無浸潤疾患生存率は、プラセボ群が98.4%、ペルツズマブ群が97.5%だった(同ハザード比:1.13、同:0.68〜1.86、p=0.64)。
なお安全性については、心不全、心臓死、心機能障害は両群ともにまれだった。一方でGrade 3以上の下痢は、化学療法実施中の発生が大半で、ペルツズマブ群9.8%と、プラセボ群の3.7%に比べ頻度が高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)