狂犬病ウイルス糖タンパク質をコードするmRNAワクチン(CV7201)を、初めてヒトに投与し安全性と免疫原性を評価したproof-of-concept試験の結果が、ドイツ・ミュンヘン大学医療センターのMartin Alberer氏らによって報告された。CV7201は、良好な忍容性プロファイルを示し概して安全であったが、無針注射装置を用いて投与された場合にのみ、WHOが推奨するレベルの中和抗体を誘導できることが認められ、通常の注射器による投与では免疫原性は示されなかった。前臨床試験では、通常の注射器でも高い免疫原性を発揮することが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2017年7月25日号掲載の報告。
針付き注射器 vs.無針注射装置、皮内 vs.筋肉内投与を検証
本試験は、2013年10月21日~2016年1月11日にドイツ・ミュンヘンの単施設で行われた。狂犬病ワクチン接種歴がない健常成人ボランティア(18~40歳の男女)が順番に登録され、針付き注射器または無針注射装置3種類のうちの1つを用い、皮内または筋肉内に、CV7201を3回(長期スケジュール[0、28、56日]、または短期スケジュール[0、7、28日])投与した。また、一部の参加者が拡大コホートに組み込まれ、接種3回目の1年後に追加投与が行われた。
主要評価項目は安全性と忍容性、副次評価項目は、WHOが規定した予防抗体価0.5 IU/mLと同等以上の狂犬病ウイルス中和力価を誘導するCV7201の最低投与量などであった。
針付き注射器を用いた場合の有効性は確認できず
被験者101例が登録され、針付き注射器(皮内投与18例、筋肉内投与24例)または無針注射装置(皮内投与46例、筋肉内投与13例)を用い、CV7201(80~640μg)を各人3回、計306回接種した。
接種7日後に、注射部位反応が皮内投与64例中60例(94%)および筋肉内投与37例中36例(97%)に、またGrade3の全身性有害事象がそれぞれ64例中50例(78%)および37例中29例(78%)に認められた。640μg筋肉内投与群で、接種7日後にCV7201との関連が疑われる予期しない重大な有害事象が1例発生したが、後遺症なく回復した。
無針注射装置群は、あらゆる投与経路と投与量においてウイルス中和抗体価0.5 IU/mL以上を誘導した(皮内投与[80μgまたは160μg]で45例中32例[71%]、筋肉内投与[200μgまたは400μg]で13例中6例[46%])。
また、1年後に追加接種を行った拡大コホートでは、無針注射装置による皮内投与(80μg)の14例中8例(57%)が中和抗体価0.5 IU/mL以上を達成した。一方、針付き注射器群で検出可能な免疫反応を示したのは1例(320μg皮内投与)のみで、有効性は認められなかった。
本試験は、長期的安全性と免疫原性の追跡調査が継続されている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)