生殖年齢後期の女性において、血中の抗ミュラー管ホルモン(AMH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インヒビンBあるいは尿中FSHといった卵巣予備能を示すバイオマーカーの低下は、妊孕性の低下とは関連していないことが明らかとなった。米国・ノースカロライナ大学のAnne Z. Steiner氏らが、不妊歴のない妊活3ヵ月未満の30~44歳の女性を対象とした前向きコホート試験の結果を報告した。卵巣予備能のバイオマーカーは、その有益性に関するエビデンスがないにもかかわらず、生殖能の目安として用いられている。著者は「尿または血中FSHや血中AMHを用いて、女性の現在の受胎能を評価することは支持されない」と注意を促している。JAMA誌2017年10月10日号掲載の報告。
卵巣予備能バイオマーカーを測定し、1年間にわたり受胎率を評価
研究グループは2008年4月~2016年3月の期間で、ノースカロライナ州にあるローリー-ダーラムの地域コミュニティで募集した、不妊歴のない妊活3ヵ月未満の30~44歳の女性981例を対象に、卵胞期前期の血清AMH、血清FSH、血清インヒビンB、尿中FSHを測定した。
主要評価項目は、6周期と12周期までの累積受胎率および相対的な受胎確率(特定の月経周期における受胎率)とし、妊娠テスト陽性を受胎と定義した。
計750例(平均年齢33.3歳[SD 3.2]、白人77%、過体重または肥満36%)から血液と尿の検体が提供され、解析に組み込んだ。
バイオマーカー低値と正常値の女性で受胎率に有意差なし
年齢、BMI、人種、現在の喫煙状況、ホルモン避妊薬使用の有無で補正後、妊活6周期までの推定受胎率は、AMH低値(<0.7ng/mL)群(84例)で65%(95%信頼区間[CI]:50~75%)、AMH正常値群(579例)で62%(同:57~66%)と両群で有意差はなかった。妊活12周期までの推定受胎率比較においても、有意差は示されなかった(AMH低値群84%[同:70~91%] vs. 正常値群75%[同:70~79%])。
血清FSHについても同様に、妊活6周期までの推定受胎率は高値(>10mIU/ml)群(83例、63%[95%CI:50~73%])と正常値群(654例、62%[同:57~66%])で有意差はなく、12周期までの推定受胎率も有意差はなかった(82%[同:70~89%] vs.75%[同:70~78%])。
尿中FSH値についても、高値(>11.5mIU/mg creatinine)群の妊活6周期までの推定受胎率(69例、61%[95%CI:46~74%])は、正常値群(660例、62%[同:58~66%])と有意差はなく、妊活12周期までの推定受胎率も有意差はなかった(70%[同:54~80%] vs.76%[同:72~80%])。
インヒビンB値に関しては、測定しえた737例において特定の月経周期での受胎率との関連性が確認されなかった(1-pg/mL増加当たりのハザード比:0.999、95%CI:0.997~1.001)。
なお著者は、出生ではなく受胎を主要評価項目としていること、排卵は評価されていないこと、男性の精液検体は提供されていないことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)