米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らは、CANTOS試験の2次解析の結果、「カナキヌマブ投与3ヵ月後の高感度C反応性蛋白(hsCRP)値低下の大きさは、治療継続により最も恩恵が得られそうな患者を特定する簡単な臨床的手段(clinical method)といえるかもしれない」との見解を示すとともに、「カナキヌマブ投与後の炎症反応が低いほど予後良好であることが示唆された」ことを報告した。ヒト型抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体のカナキヌマブは、心筋梗塞既往患者を対象としたCANTOS試験において、脂質に影響せず炎症と心血管イベントを抑制することが示されている。しかし、どの患者集団で最も有益なのか、またhsCRP値の低下が個々の患者で臨床的有益性と関連するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年11月13日号掲載の報告。
CANTOS試験の2次解析で検討
CANTOS試験は、心筋梗塞の既往歴があるhsCRP値2mg/L以上の患者1万61例を対象に、カナキヌマブ(50mg、150mg、300mg)またはプラセボの4群に割り付け、標準治療に加えそれぞれを3ヵ月に1回皮下投与した時の、心血管イベント抑制効果を検討した無作為化二重盲検比較試験である。
研究グループは、事前に規定されていた2次解析として、心血管イベント減少とhsCRP低下との関連性を検証した。具体的に、治療中のhsCRP値からみた、カナキヌマブの主要有害心血管イベント(MACE)発生率、心血管死亡率および全死因死亡率に対する影響を、hsCRP値達成と関連するベースライン要因を調整した多変量モデルを用いて評価した。また、残余交絡因子に対処するため複数の感度解析も行った。
追跡期間中央値は3.7年であった。
hsCRP値2mg/L未満達成で主要有害心血管イベントが25%減少
ベースラインの臨床的特徴からは、カナキヌマブ治療が心血管系のベネフィットをもたらすのか否かがうかがわれる患者集団は特定されなかった。しかしながら、カナキヌマブ投与群において、初回投与後3ヵ月時にhsCRP値が2mg/L未満を達成した患者は、プラセボ群と比較しMACEの発生が25%減少し(多変量補正後ハザード比[HR
adj]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.66~0.85、p<0.0001)、一方、hsCRP値が2mg/L以上の患者では有意な減少は確認されなかった(HR
adj:0.90、95%CI:0.79~1.02、p=0.11)。
また、hsCRP値2mg/L未満を達成したカナキヌマブ群の患者は、心血管死亡率(HR
adj:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0004)および全死因死亡率(HR
adj:0.69、95%CI:0.58~0.81、p<0.0001)がいずれも31%減少したが、hsCRP値2mg/L以上の患者では有意な減少は認められなかった。
事前に規定された副次心血管エンドポイント(不安定狭心症のための緊急血行再建術による入院を追加)の解析、hsCRP値低下の中央値・hsCRP値50%以上低下・hsCRP値低下率の中央値に基づいた感度解析、投与量別解析、hsCRP目標値に達した患者における治療効果を算出する因果推論法を用いた解析においても、同様の結果が確認された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)