National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は新薬/ブランド薬について、米国食品医薬品局(FDA)未承認の適応をしばしば推奨しているが、このような適応外使用を推奨する根拠のエビデンスレベルは低いことが明らかにされた。米国・オレゴン健康科学大学のJeffrey Wagner氏らが、抗がん剤についてNCCNガイドラインでの推奨とFDA承認との差異を、また適応外使用の推奨を正当化するためにNCCNが採用したエビデンスについて、後ろ向きに調査し報告した。NCCNによる適応外使用推奨のパターンや、こうした推奨がその後、FDA承認に至っているのかを検証した解析はこれまでなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「弱いエビデンスに基づいた高価で有害ながん治療薬の保険償還を、NCCNが正当化していることに懸念を禁じ得ない」とまとめている。BMJ誌2018年3月7日号掲載の報告。
FDAで承認された新薬47種の適応症とNCCNの推奨を比較
NCCNが公表しているがん診療ガイドラインは、米国のメディケア・メディケイドサービスセンターが保険償還を決定するために使用する5つの医薬品集(compendiums)のうちの1つで、民間保険会社でも使用されている。
研究グループは、2011~15年の期間にFDAが承認した新規抗がん剤47種について、2016年3月25日時点で、FDAが承認したすべての適応症(新規および追加)とNCCNの推奨を比較した。FDA承認外でNCCNが推奨していた場合、その推奨を分類し、採用されたエビデンスについて調査した。
適応外推奨は約4割、その後の追加承認はわずか
47種の抗がん剤について、FDA承認の適応症は69個に対し、NCCNでは113個の適応症が推奨されていた。113個のうち69個(62%)はFDA承認の適応症と重複していたが、44個(39%)は承認適応外で追加推奨されていた。適応外推奨数の平均値は0.92であった。
追加推奨のうち無作為化試験のエビデンスに基づくものは10個(23%)で、第III相試験のエビデンスに基づくものは7個(16%)であった。
21ヵ月の追跡期間中、FDAが適応症追加を承認したのは44個のうちわずか6個(14%)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)