経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による侵襲的管理(確定診断や冠動脈再建術の系統的評価を目的とした冠動脈造影)が予定されている急性冠症候群(ACS)患者に、アトルバスタチンの周術期ローディング投与を行っても、30日主要心血管イベント(MACE)発生率は低下せず、こうした患者へのアトルバスタチンのローディング投与を日常的に使用することは支持されないことが明らかとなった。ブラジル・Research Institute-Heart HospitalのOtavio Berwanger氏らが、同国53施設で実施した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SECURE-PCI試験」の結果を報告した。これまで、大規模無作為化臨床試験において、心血管疾患の1次および2次予防としてのスタチンの有効性および安全性は確立されていたが、ACSで侵襲的管理が予定されている患者において、スタチンのローディング投与の臨床転帰への影響は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2018年3月11日号掲載の報告。
30日MACE発生率をアトルバスタチンとプラセボで比較
研究グループは、2012年4月18日~2017年10月6日に、冠動脈造影に引き続き解剖学的に可能な場合はPCIを施行する予定のACS患者4,191例を、アトルバスタチン群(2,087例)とプラセボ群(2,104例)に無作為に割り付けた。アトルバスタチン群では、PCI施行前と施行24時間後にアトルバスタチン80mgを、プラセボ群では同様にプラセボを投与し、両群ともその後はアトルバスタチン40mg/日を30日間投与した。
主要評価項目は、30日MACE(全死因死亡・急性心筋梗塞・脳卒中・予定外の緊急再血行再建術の複合)発生率。30日アウトカムの最終フォローアップは2017年11月6日であった。ローディング投与の有効性は、無作為化された全例(intention-to-treat集団)を対象に、Cox回帰分析を用いハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で評価した。
30日MACE発生率はローディング投与6.2%、プラセボ7.1%で有意差なし
無作為化を受けた4,191例(平均年齢61.8[SD 11.5]歳、女性1,085例[25.9%])のうち、4,163例(99.3%)が30日間のフォローアップを完遂した。また、2,710例(64.7%)がPCI、333例(8%)が冠動脈バイパス術、1,144例(27.3%)が内科的管理のみを受けた。
30日MACE発生率は、アトルバスタチン群6.2%(130例)、プラセボ群7.1%(149例)で、絶対差0.85%(95%CI:-0.70~2.41%)、HRは0.88(95%CI:0.69~1.11、p=0.27)であった。肝不全の症例は報告されなかったが、横紋筋融解症がプラセボ群でのみ3例(0.1%)報告された。
著者は研究の限界として、PCIが施行されなかったACS患者を組み込んでいること、最終的にACSの確定診断がつかなかった患者が約3%含まれていたことなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)