急性骨髄性白血病(AML)では、完全寛解中の分子レベルでの微小残存病変の検出が、再発率や生存率に関して、高度な独立の予後因子としての意義を持つことが、オランダ・エラスムス大学のMojca Jongen-Lavrencic氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年3月29日号に掲載された。AML患者は完全寛解に到達することが比較的多いが、再発率が依然として高い。次世代シークエンシングにより、ほぼすべての患者で分子レベルの微小残存病変の検出が可能となったが、再発の予測における臨床的な意義は確立されていないという。
再発、生存の予測に臨床的な意義を付加するかを検証
研究グループは、次世代シークエンシングを用いた標的分子のモニタリングが、白血病の再発の予測に臨床的な意義を付加するかを検証する大規模なコホート研究を実施した(オランダがん協会のQueen Wilhelmina基金などの助成による)。
2001~13年の期間に新規に診断された、年齢18~65歳のAML患者を対象とした。診断時および寛解導入療法後の完全寛解時に、ターゲット次世代シークエンシングを用いて遺伝子変異の評価を行った。
エンドポイントは、4年時の再発率、無再発生存率、全生存率であった。
加齢に伴うクローン性造血には、再発リスクとの関連はない
482例のAML患者が登録され、平均2.9ヵ所の遺伝子変異が検出された。1つ以上の変異が検出された430例(89.2%)の年齢中央値は51歳(範囲:18~66)で、216例が男性であった。診断時に検出された変異のうち頻度が高かったのは、
NPM1(39%)、
DNMT3A(33%)、
FLT3(33%)などであった。
このうち51.4%で完全寛解中も変異が持続し、変異のアレル頻度にはばらつきがみられた(範囲:0.02~47%)。また、加齢に伴うクローン性造血を有する人に比較的多く発現する持続的な
DTA変異(
DNMT3A、
TET2、
ASXL1の変異)の検出は、再発率の上昇とは関連がなかった。
持続的な
DTA変異を除くと、分子レベルの微小残存病変の検出は、検出されない場合に比べて、4年時の再発率が有意に高く(55.4 vs.31.9%、ハザード比[HR]:2.14、p<0.001)、無再発生存率が低く(36.6 vs.58.1%、再発または死亡のHR:1.92、p<0.001)、全生存率が低かった(41.9 vs.66.1%、死亡のHR:2.06、p<0.001)。
多変量解析では、完全寛解中の
DTA以外の遺伝子変異の持続的な検出は、再発率(HR:1.89、p<0.001)、無再発生存率(再発または死亡のHR:1.64、p=0.001)、全生存率(死亡のHR:1.64、p=0.003)に関し、高度な独立の予後因子としての意義をもたらすことが確認された。
また、残存病変の検出におけるシークエンシングとフローサイトメトリーの比較では、シークエンシングは付加的な予後因子としての意義を有することが示された。
著者は、「
DTA変異の持続は再発リスクの増加とは関連しなかったことから、再発を予防するためにこれらの残存細胞を除去する必要はないと考えられるが、さらに長期のフォローアップを行った場合に再発リスクが増加する可能性は排除されない」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)