有病率8.6%。中国のCOPD有病率とリスク因子/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/04/24

 

 中国の20歳以上の成人における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率は8.6%に達し、喫煙、環境大気汚染、痩せ、小児期の慢性咳嗽、親の呼吸器疾患歴、小学校以下の教育歴がリスク因子であることが、中国・中日友好病院呼吸器医療センターのChen Wang氏らが行ったChina Pulmonary Health(CPH)研究で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年4月9日号に掲載された。2002~04年に行われた40歳以上の中国人の調査では、COPDの有病率は8.2%(男性:12.4%、女性:5.1%)と報告され、リスク因子として環境大気汚染や喫煙の重要性が指摘されている。一方、若年成人におけるCOPD有病率の上昇を示唆する報告があるが、40歳未満の中国人のデータはこれまでなかったという。

約5万人の横断研究
 CPHは、中国本土の10の省、自治区、直轄市の20歳以上の成人を対象とする全国的な横断研究である(中国衛生部、科学技術部の助成による)。

 すべての参加者は、気管支拡張薬吸入後に肺機能検査を受けた。COPDの診断は、GOLD判定基準(2017年版)に従い、非COPD、Grade I~IVのCOPDに分類した。多変量ロジスティック回帰分析で、全体および非喫煙者におけるリスク因子を同定した。

 2012年6月~2015年5月の期間に、5万7,779人に参加を呼びかけ、そのうち信頼性の高い肺機能検査の結果が得られた5万991人(男性:2万1,446人、女性:2万9,545人)を解析に含めた。

過去に肺機能検査歴のある患者は12.0%のみ
 2015年の20歳以上の中国人におけるCOPD患者数は9,990万人(95%信頼区間[CI]:7,630万~1億3,570万)であり、全体のCOPD有病率は8.6%(7.5~9.9)であった。

 男性の有病率は11.9%(95%CI:10.2~13.8)で、女性の5.4%(4.6~6.2)に比べ高率であった(p<0.0001)。この男女間の差は、全体および非喫煙者でも全年齢層で認められた。また、40歳以上の有病率は13.7%(12.1~15.5)と、20~39歳の2.1%(1.4~3.2)に比し高かった(p<0.0001)。さらに、農村部住民は都市部住民よりも有病率が高かった(9.6 vs.7.4%、p=0.047)。過去に肺機能検査歴があるのは12.0%(95%CI:8.1~17.4)のみだった。

 COPDのリスク因子として、20箱年以上の喫煙(オッズ比[OR]:1.95、95%CI:1.53~2.47、p<0.0001)、直径2.5μm未満の粒子状物質(PM2.5)の平均年間曝露量が50~74μg/m3(1.85、1.23~2.77、p=0.005)および75μg/m3以上(2.00、1.36~2.92、p=0.001)の場合、BMI<18.5の痩せ(1.43、1.03~1.97、p=0.03)、小児期(14歳未満)のときどき(年に1~3ヵ月)発現する慢性咳嗽(1.48、1.14~1.93、p=0.006)および頻繁(年に3ヵ月以上)に発現する慢性咳嗽(2.57、2.01~3.29、p<0.0001)、親の呼吸器疾患歴(1.40、1.23~1.60、p<0.0001)が挙げられた。このうち喫煙を除く6つの因子は、非喫煙者においても有意なリスク因子であった。

 COPD発症のリスクが低い因子は、初級中学~高級中学(Middle and high school)の教育歴(OR:0.76、95%CI:0.64~0.90、p=0.003)と、大学(college)以上の教育歴(0.47、0.33~0.66、p=0.0002)であった。

 著者は、「COPD関連合併症や死亡を低減するために、予防およびスパイロメトリーによるCOPDの早期検出を公衆衛生上の最優先課題とすべき」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)