重症代謝性アシドーシスに対し、治療選択肢の1つと考えられている炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)投与の有効性について検討した結果が、フランス・Montpellier University HospitalのSamir Jaber氏らによる第III相多施設共同非盲検無作為化試験「BICAR-ICU試験」の結果、示された。主要複合アウトカム(28日以内の全死因死亡と7日以内の臓器不全)について、有意差は示されなかったが抑制効果がみられ、急性腎障害(AKI)を有した患者群では28日死亡率の有意な低下が認められたという。Lancet誌オンライン版2018年6月14日号掲載の報告。
28日以内の全死因死亡と7日以内の1つ以上の臓器不全の発生を評価
試験は、フランスの26ヵ所のICUから患者を集めて行われた。各地の研究者がスクリーニングを行い、重症代謝性アシドーシス(pH:≦7.20、PaCO
2:≦45mmHg、炭酸水素ナトリウム濃度:≦20mmol/L)を呈し、臓器不全評価(SOFA)総スコアが4以上または血中乳酸濃度2mmol/L以上で、ICUに入室後48時間以内の18歳以上の患者を適格とした。
被験者を層別無作為化法(限定的なウェブプラットフォームを使って最小化)により1対1の割合で、炭酸水素ナトリウム非投与(対照)群または4.2%炭酸水素ナトリウム静注でpH7.30超を維持する群に無作為に割り付けた。静注投与は、30分以内で125~250mLの範囲内とすること、包含後24時間以内で最大量1,000mLとすることを推奨値とした。
また無作為化では、事前に規定した3層(年齢、敗血症の状態、急性腎障害ネットワーク[AKIN]スコア)への層別化も行った。
主要アウトカムは、28日以内の全死因死亡と7日以内の1つ以上の臓器不全の複合であった。すべての解析はintention-to-treat(ITT)集団(無作為化を受けた全患者)のデータに基づき行われた。
AKI患者では28日生存率に有意な差
2015年5月5日~2017年5月7日にITT集団として389例が登録された(対照群194例、炭酸水素ナトリウム群195例)。
主要複合アウトカムの発生は、対照群138/194例(71%)、炭酸水素ナトリウム群128/195例(66%)であった(推定絶対差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-15.2~4.2、p=0.24)。
Kaplan-Meier法による28日時点の推定生存率は、対照群と炭酸水素ナトリウム群で有意差はなかった(46%[95%CI:40~54] vs.55%[49~63]p=0.09)。事前規定のAKIN(スコア2または3)層別化患者においては、Kaplan-Meier法による28日時点の推定生存率は、対照群と炭酸水素ナトリウム群で有意差が認められた(63%[52~72] vs.46%[35~55]p=0.0283)。
代謝性アルカローシス、高ナトリウム血症、低カルシウム血症は、対照群より炭酸ナトリウム群でより多く観察された。命に関わる合併症の報告はなかった。
(ケアネット)