転移を有する大腸がんの3次治療の選択肢は少ない。中国・同済大学上海東病院のJin Li氏らは、2ライン以上の化学療法を施行後に病勢が進行した転移を有する大腸がんの治療において、経口血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬fruquintinibが、プラセボに比べ全生存(OS)期間を統計学的に有意に延長することを示した(FRESCO試験)。研究の成果は、JAMA誌2018年6月26日号に掲載された。fruquintinibは、高い選択性を持つVEGFR-1、-2、-3の低分子阻害薬であり、腫瘍の増殖と関連する血管新生を抑制する。
中国人患者で有効性と安全性をプラセボと比較
FRESCOは、中国の28施設で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験である(Hutchison MediPharmaなどの助成による)。
対象は、年齢18~75歳、全身状態(ECOG PS)が0/1で、2ライン以上の前化学療法歴がある、転移を有する大腸がん患者であった。VEGF阻害薬やEGFR阻害薬による前治療は許容されたが、他のVEGFR阻害薬の前投与歴のある患者は除外された。
被験者は、fruquintinib(5mg/日)またはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合でランダムに割り付けられた。治療は、1サイクルを28日として21日間投与後7日間休薬し、病勢進行、耐用不能な毒性の発現、試験脱落となるまで継続された。
主要エンドポイントはOSであった。有効性の副次エンドポイントは、無増悪生存(PFS:ランダム割り付け時から病勢進行または死亡までの期間)、客観的奏効率(ORR:完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、病勢コントロール率(DCR:CR+PR+8週以上持続する安定[SD])とし、奏効期間(DOR)、安全性の評価も行った。
2014年12月~2016年5月の期間に、416例(平均年齢54.6歳、女性38.7%)が登録され、fruquintinib群に278例、プラセボ群には138例が割り付けられた。404例(97.1%)が試験を完遂した。
OSが約3ヵ月、PFSが約2ヵ月延長、1例でCR
ベースライン時に、男性がプラセボ群で多かった(56.8 vs.70.3%)。両群とも、ほとんどの患者が複数の転移巣(95.3 vs.97.1%)を有し、肝転移(66.5 vs.73.9%)を有する患者が多かった。VEGF阻害薬(30.2 vs.29.7%)およびEGFR阻害薬(14.4 vs.13.8%)の投与歴、K-ras変異の頻度(56.5 vs.53.6%)は両群で同等だった。
OS期間中央値は、fruquintinib群が9.3ヵ月と、プラセボ群の6.6ヵ月に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.51~0.83、p<0.001)。OSのサブグループ解析では、ほぼすべてのサブグループでfruquintinib群が良好であった。
PFS期間中央値も、fruquintinib群が3.7ヵ月と、プラセボ群の1.8ヵ月に比し有意に長かった(病勢進行と死亡のHR:0.26、95%CI:0.21~0.34、p<0.001)。PFSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでfruquintinib群が優れた。
ORR(4.7 vs.0%、p=0.01)およびDCR(62.2 vs.12.3%、p<0.001)も、fruquintinib群が有意に優れ、同群ではCRが1例、PRが12例に認められた。データカットオフ日に、奏効例のほとんどが病勢進行に至らず治療継続中であり、それゆえDOR中央値には未到達であった(データカットオフ時点でのDORは5.6ヵ月)。
Grade3/4の治療関連有害事象は、fruquintinib群が61.2%、プラセボ群は19.7%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ15.5%、5.8%に認められ、入院または入院の延長を要する重篤な有害事象は14.4%、5.1%にみられた。fruquintinib群で頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象として、高血圧(21.2%)、手足皮膚反応(10.8%)、蛋白尿(3.2%)が認められた。
著者は、「中国以外の地域での有効性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。
(医学ライター 菅野 守)