米国では2009年以降、肝硬変による死亡率が上昇していることが明らかにされた。25~34歳群の上昇が最も大きく、原因はアルコール性肝疾患によるものであった。米国・ミシガン大学のElliot B. Tapper氏らが行った観察コホート研究の結果で、著者は「若い年代でアルコールが原因による死亡が急増していることは、肝疾患予防の適切なケアについて、新たなチャレンジが必要なことを強調するものだ」と述べている。このほか解析からは、肝硬変による死亡は、白人・ネイティブアメリカン・ヒスパニック系米国人での急増が大きかったこと、メリーランド州では改善していた一方、ケンタッキー・ニューメキシコ・アーカンソー州で高率であったことなどが明らかになったという。BMJ誌2018年7月18日号掲載の報告。
1999~2016年の米国住民の肝硬変、肝がんの死亡動向を調査
研究グループは、米国住民の肝硬変および肝がんによる死亡について、1999~2016年の動向を、年齢群、性別、人種、肝疾患原因別、地域別に調べた。米国疾病対策予防センター(CDC)のWide-ranging OnLine Data for Epidemiologic Research(WONDER)を介して、人口動態統計調査からの死亡データ、国勢調査からの住民データを集めて分析した。
主要評価項目は、肝硬変および肝細胞がんによる死亡率で、joinpoint回帰法を用いて動向を評価した。
25~34歳群で年間10.5%増、原因はアルコール関連
米国における肝硬変による年間死亡者数は、1999年は2万661例であったが、2016年は65%増の3万4,174例となっていた。肝細胞がんによる年間死亡者数は、同5,112例から倍増の1万1,073例となっていた。唯一、アジア系・環太平洋島民米国人のみ、対象期間内に肝細胞がん死の有意な改善(年間2.7%減[95%信頼区間[CI]:2.2~3.3]、p<0.001)がみられた。
人種別にみて、肝硬変に関連した年間死亡率の伸び率が最も大きかったのはネイティブアメリカン(国勢調査でアメリカインディアンとされている住民)で、4.0%(95%CI:2.2~5.7、p=0.002)であった。
年齢補正後の肝細胞がん死は、毎年2.1%(95%CI:1.9~2.3、p<0.001)上昇が認められた。肝硬変による死亡の上昇は2009年に始まっており、2016年までに年間3.4%(3.1~3.8、p<0.001)上昇していた(1999~2008年は減少[年間-0.5%、p=0.02])。
2009~16年に肝硬変関連死が最も増大していたのは25~34歳群で(10.5%、95%CI:8.9~12.2、p<0.001)、もっぱら原因はアルコール関連の肝疾患によるものであった。また、同期間中、肝硬変関連では腹膜炎による死亡(年間死亡率増:6.1%、95%CI:3.9~8.2)と、敗血症による死亡(同7.1%、6.1~8.4)が大きく増大していた。さらに州別の解析では、唯一メリーランド州のみ死亡の改善が認められた(年間死亡率-1.2%、95%CI:-1.7~-0.7)。一方で南西部の州に集中して偏って年間死亡率の上昇が認められた。具体的には、ケンタッキーで6.8%(95%CI:5.1~8.5)、ニューメキシコ州6.0%(4.1~7.9)、アーカンソー州5.7%(3.9~7.6)、インディアナ州5.0%(3.8~6.1)、アラバマ州5.0%(3.2~6.8)。
肝細胞がん関連の死亡の改善が認められた州はなかった。最も深刻な年率増がみられたのは、アリゾナ州5.1%(3.7~6.5)、カンザス州4.3%(2.8~5.8)であった。
(ケアネット)