十分な公共サービスが受けられない就学前児童を対象に、肥満予防のための多相的な行動変容介入を36ヵ月間行ったが、BMI値への影響はみられなかった。米国・Vanderbilt University School of MedicineのShari L. Barkin氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年8月7日号で発表された。十分な公共サービスが受けられない集団の小児は、肥満有病率と慢性疾患リスクが最も高く、小児期の肥満予防が重大な課題になっているという。
36ヵ月間にわたる多相的な行動変容介入vs.スクールレディネスの効果を検証
研究グループは、肥満リスクが高い就学前児童を対象に、36ヵ月間にわたる多相的な行動変容介入が、同期間中のBMI成長曲線に影響するのかを検証した。テネシー州ナッシュビルの、公共サービスが十分に行き届いていないコミュニティに属する610例の親子を、36ヵ月間の健康行動をターゲットとした介入を受ける群またはスクールレディネスを受ける対照群に無作為に割り付け追跡調査した。対象小児は3~5歳児で肥満リスクはあるが非肥満児を適格とした。
介入群(304例)には、36ヵ月間の家族ベースでコミュニティを対象としたプログラムが提供された。具体的には段階的に介入の強度を減じるプログラムで次の3相から成るものであった。(1)12週間の集中強化相:毎週1回90分のスキル(目標設定、セルフモニタリング、問題解決など)を身につけるセッション、(2)9ヵ月間の維持管理相:月1回の電話コーチング、(3)24ヵ月間の継続相:定期的な行動機会(テキストや個別レター送付、月1回の訪問など)の提供。
対照群(306例)は、36ヵ月の試験期間中、ナッシュビルの公立図書館で行われた6回のスクールレディネス(ベースライン、3、9、12、24、36ヵ月時に開催・データ収集、1回30分の集団学習)を受けた。このスクールレディネスは、介入群も受けた。
試験登録は2012年8月~2014年5月に行われ、36ヵ月時のフォローアップは、2015年10月~2017年6月までに行われた。
主要評価項目は、36ヵ月間の小児のBMI成長曲線であった。事前に規定した副次評価項目は7つ(保護者が報告した子供の食事摂取量、コミュニティセンターの利用など)であった。多重比較のため、Benjamini-Hochberg法を用いて補正を行った。
36ヵ月間のBMI成長曲線に有意差みられず
被験者の大部分がラテン系アメリカ人(91.4%)で、ベースラインの平均年齢は4.3歳(SD 0.9)、女児が51.9%、世帯収入2万5,000ドル未満の家族が56.7%であった。
90.2%が36ヵ月のフォローアップを完了した。36ヵ月時点の平均BMIは、介入群17.8(SD 2.2)、対照群17.8(2.1)であった。主要評価項目の、36ヵ月間のBMI成長曲線について、群間の有意差はみられなかった(結合尤度比検定のp=0.39)。
子供の平均エネルギー摂取量は、介入群(1,227kcal/日)が対照群(1,323kcal/日)に比べて有意に少なかった(補正後群間差:-99.4kcal、95%信頼区間[CI]:-160.7~-38.0、補正後p=0.003)。また、介入群の保護者のほうが対照群の保護者と比べて、子供と一緒にコミュニティセンターを利用した割合が有意に高率であった(56.8% vs.44.4%、リスク比:1.29[95%CI:1.08~1.53]、補正後p=0.006)。
これらの結果を踏まえて著者は、「その他タイプの行動変容介入の効果や、他市での介入効果について、さらなる試験を行う必要があるだろう」と述べている。
(ケアネット)