カナダ・セント・マイケルズ病院のFahad Razak氏らは、人口統計調査と健康調査(Demographic Health Surveys:DHS)における集団平均値と異常の分布の関連性を調べた。その結果、集団平均値と、BMI低値や貧血症のような欠乏症有病率との関連は、平均BMI値と、過体重や肥満のような過剰症との関連よりも、かなり弱いことが明らかとなり、BMJ誌2018年8月3日号で報告された。約30年前のBMJ誌において、Geoffrey RoseとSimon Dayが、リスク因子の集団平均値は、異常や疾患有病率と強く関連していることを示した。たとえば、平均BMI値と肥満や、平均血圧値と高血圧のような関連である。その後多くの報告でこの所見が活用されたが、ほとんどが、集団平均値と過剰症(right side)の検討に集中していた。今回、研究グループは、過剰症と比べて欠乏症(left side)との関連は弱いのではないかと仮説を立て、検証を行った。
65ヵ国のDHSデータを基に、平均値と有病率の関連を調査
検討には、1994~2014年に全国代表サンプル断面調査として行われた65ヵ国のDHSデータを用いた。解析に用いたのは、妊娠していない20~49歳の女性のデータで、BMI値解析のために65ヵ国から52万4,380例を、またヘモグロビン値解析のために44ヵ国から31万6,465例を選定した。
主要評価項目は、平均値と有病率の関連で、BMI値解析では、重篤な慢性エネルギー欠乏症(SCED、BMI値<16.0)、低体重(<18.5)、過体重(>25)、肥満(>30)を定義。ヘモグロビン値解析では、貧血症をヘモグロビン値<12.0g/dL、重篤な貧血症を同<8.0g/dLとした。
BMI、ヘモグロビンともにleft sideとの関連は弱い
解析の結果、BMI値と、過体重有病率(r
2=0.98、r=0.99、β=8.3[95%信頼区間[CI]:8.0~8.6])および肥満有病率(r
2=0.93、r=0.97、β=4.2[3.9~4.5])には、強固な関連が認められた。
一方、欠乏症との関連では、BMI値と低体重の関連の強さは中程度~強固で(r
2=0.67、r=-0.82、β=-2.7[-3.1~-2.2])、BMI値とSCEDの関連はより弱かった(r
2=0.38、r=-0.61、β=-0.32[-0.43~-0.22])。
ヘモグロビン値と貧血症の関連の強さは中程度で(r
2=0.46、r=-0.68、β=-10.8[-14.5~-7.1])、ヘモグロビン値と重篤な貧血症の関連の強さは、より弱かった(r
2=0.30、r=-0.55、β=-0.55[-0.81~-0.29])。
(ケアネット)