進行性、再発性または症候性のデスモイド腫瘍の患者において、ソラフェニブは無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、持続性の奏効をもたらすことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMrinal M. Gounder氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。デスモイド腫瘍(侵襲性線維腫症とも呼ばれる)は、あらゆる解剖学的部位に発生し、腸間膜、神経血管構造、臓器に浸潤する可能性のある結合組織腫瘍であり、標準治療は確立されていない。ソラフェニブは、複数の標的を持つ受容体チロシンキナーゼ阻害薬であり、レトロスペクティブな解析では、デスモイド腫瘍に対し安全に投与可能であり、奏効率は25%と報告されている。
PFSをプラセボと比較する無作為化試験
本研究は、デスモイド腫瘍の治療におけるソラフェニブの有用性を評価する二重盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。対象は、年齢18歳以上、組織学的にデスモイド腫瘍(侵襲性線維腫症)が確認され、進行性病変、切除不能または拡大手術を要する再発または原発病変、症候性病変を有する患者であった。
被験者は、ソラフェニブ(400mg錠剤、1日1回)を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。病勢が進行したプラセボ群の患者は、ソラフェニブへのクロスオーバーが許容された。
主要エンドポイントは、試験担当医判定によるPFS期間(無作為割り付けから病勢進行または死亡までの期間)、副次エンドポイントには、客観的奏効率(ORR)および有害事象が含まれた。
2014年3月21日~2016年1月6日の期間に、米国の24施設に87例が登録され、ソラフェニブ群に50例、プラセボ群には37例が割り付けられた。
病勢進行・死亡リスクが87%低減
ベースラインの全体の年齢中央値は37歳(IQR:28~50)、女性が69%であった。データカットオフ時にソラフェニブ群の19例(39%)が治療継続中であった。中間解析時に、データ安全性監視委員会により有効性の解析が要請され、試験は有効中止となった。フォローアップ期間中央値は27.2ヵ月(IQR:22.0~31.7)だった。
PFS期間中央値は、ソラフェニブ群が評価不能、プラセボ群は11.3ヵ月で、1年PFS率はそれぞれ89%、46%、2年PFS率は81%、36%であり、病勢進行または死亡のリスクがソラフェニブ群で87%低かった(ハザード比[HR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.05~0.31、p<0.001)。病勢進行は全体で28例(33%)に認められ、ソラフェニブ群が6例(12%)、プラセボ群は22例(63%)であった。
クロスオーバー前のORRは、ソラフェニブ群が33%(完全奏効1例、部分奏効15例)、プラセボ群は20%(部分奏効7例)であった。客観的奏効までの期間中央値は、ソラフェニブ群が9.6ヵ月(IQR:6.6~16.7)、プラセボ群は13.3ヵ月(11.2~31.1)であった。ソラフェニブ群の奏効例の多くで、奏効が持続した。
有害事象による投与中止はソラフェニブ群で多かった(20% vs.0%)。ソラフェニブ群で、用量減量の原因として最も多かった有害事象は皮膚障害であった。ソラフェニブ群でとくに多く報告された有害事象は、Grade1/2の発疹(73%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(69%)、疲労(67%)、高血圧(55%)、下痢(51%)であった。ソラフェニブ群の1例が疾患関連の腸管穿孔で死亡した(薬剤との関連はない)。
著者は、「予測可能な毒性作用プロファイルとPFSの大きな便益に基づくと、ソラフェニブは1次治療または後治療としての抗腫瘍活性を有する」としている。
(医学ライター 菅野 守)