脳卒中治療の集約化、死亡率・入院期間を低下/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/02/04

 

 全脳卒中患者が超急性期治療を受ける脳卒中治療の集約型モデルは、死亡および急性期病院の入院期間を低減し、エビデンスに基づく臨床的介入の導入を促進することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのStephen Morris氏らの調査で確認された。研究の成果は、BMJ誌2019年1月23日号に掲載された。イングランドでは、2010年、急性期脳卒中の医療サービスを2つの大都市圏に集約した。全脳卒中患者に超急性期治療を行う施策を採用したロンドンでは、死亡および入院期間の低下がみられたのに対し、症状発現から4時間以内の患者に限定して超急性期治療を行うこととしたグレーター・マンチェスターでは、入院期間は短縮したものの死亡への影響は認めなかったという。そこで、2015年、グレーター・マンチェスターでも全例に超急性期治療を行うよう、さらなる集約化が進められた。

集約化の影響を後ろ向きに評価
 研究グループは、2015年のグレーター・マンチェスターにおける急性期脳卒中の医療サービスのさらなる集約化が及ぼしたアウトカムの変化を評価し、2010年のロンドンにおける集約化の影響が、その後も持続しているかを検証するために、レトロスペクティブな解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の委託による)。

 英国の国家統計局の死亡データと関連付けたHospital Episode Statistics(HES)データベース、およびSentinel Stroke National Audit Programme(SSNAP)の患者レベルのデータを後ろ向きに解析した。

 対象は、2008年1月~2016年3月の都市部に居住する脳卒中患者50万9,182例(HES登録患者)と、2013年4月~2016年3月の脳卒中患者21万8,120例(SSNAP登録患者)であった。脳卒中の入院施設での組織的治療へのアクセスを向上させる方法として、急性期脳卒中の医療サービスをhub and spokeシステムに集約した。

 主要アウトカムは、入院後90日時の死亡、急性期病院の入院期間、超急性期脳卒中治療室(HASU)での治療、19種のエビデンスに基づく臨床的介入(60分/180分/24時間以内の脳画像検査、適格例へのt-PA投与、4時間以内の嚥下障害の評価・脳卒中治療室[SU]への入室、24/72時間以内の理学療法士・言語聴覚士による評価など)であった。

さらなる集約化で死亡・入院が改善、ロンドンでは効果が持続
 地域間の差分の差分分析では、2015年4月以降、イングランドの他の地域と比較して、グレーター・マンチェスターにおけるリスク補正後の入院後90日死亡率は、脳卒中患者全体では改善の傾向がみられ(差分の差分:-1.3%、95%信頼区間[CI]:-2.7~0.01)、HASUで治療を受けた患者(全患者の86%)では有意な低下が認められた(-1.8%、-3.4~-0.2)。

 グレーター・マンチェスターでは、年間4,500件の脳卒中が発生していると推定されることから、HASUでの治療により少なくとも年間69件の死亡を回避できると推算された(4,500×0.86×-1.8/100)。

 また、グレーター・マンチェスターにおける脳卒中患者全体のリスク補正後の急性期病院入院期間も、イングランドの他の地域に比べ有意に短縮した(-1.5日、95%CI:-2.5~-0.4、p<0.01)。これにより、脳卒中の年間発生件数を4,500件とすると、入院日数は少なくとも年間6,750日短縮することになる。HASUで治療を受けた患者の割合は、2010~12年の39%から、2015/16年には86%に増加した。

 一方、ロンドンでは、入院後90日死亡率には経時的に有意な変動はなく(p=0.09)、入院期間は有意に短縮していた(p<0.01)。HASUで治療を受けた患者は、2010~12年が93%、2015/16年は94%だった。

 エビデンスに基づく臨床的介入の導入は、両地域とも全般に持続または向上していた。

 著者は、「全例が超急性期治療を受けるという、急性期脳卒中の医療サービスのhub and spokeモデルへの集約に関して、さらなるエビデンスがもたらされた」とまとめ、「今後、集約化が脳卒中後の能力低下に及ぼす影響とともに、ロンドンで改善効果が持続していた要因の解明を進めることが有益と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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