LVAD使用の重症心不全に同種異系MPCは有益か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/11

 

 重症心不全で補助人工心臓(LVAD)植え込み術を受けた患者に対し、同種異系間葉系前駆細胞(MPC)の心筋内注入は、シャム注入と比較して6ヵ月時点でLVADからの一時的離脱成功率を改善しないことが、カナダ・トロント総合病院のTerrence M. Yau氏らが約160例を対象に行った第II相無作為化試験の結果、示された。LVADは心機能を改善するが、外植片が十分に回復する患者はほとんどいない。そのことが心機能回復を増大するための幹細胞に注意を向けることになっていたが、今回の結果を受けて著者は「所見は、心機能回復を促進するために間葉系幹細胞の心筋内注入は支持しないことを示すものであった」とまとめている。JAMA誌2019年3月26日号掲載の報告。

同種異系MPC、1億5,000万個を心筋内注入
 研究グループは2015年7月~2017年8月にかけて、北米19ヵ所の医療機関を通じて、重症心不全でLVAD適応となった患者159例を対象に無作為化試験を開始し、1年間追跡した(2018年8月に終了)。

 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方には同種異系MPC、1億5,000万個を心筋内注入した(106例)。もう一方の群には、シャム処置として凍結保護培地を注入した(53例)。

 有効性の主要エンドポイントは、無作為化後6ヵ月間のLVADからの一時的離脱成功率で、3回にわたって計画的に評価を行った。主要エンドポイントはベイズ解析にて評価し、事後確率80%を離脱成功の閾値と事前に定義した。

 安全性の主要エンドポイントは1年時に評価し、心筋内注入に関連した有害事象(心筋炎、心筋破裂、新生物、過敏症反応、免疫感作)とした。

6ヵ月LVAD一時的離脱成功率、MPC群61%、対照群58%
 被験者159例の平均年齢は56歳、女性は11.3%。1年の追跡完遂者は155例(97.5%)だった。ベイズ解析によるMPCがLVAD離脱成功を増す可能性を示す事後確率は69%で、事前に定義した閾値80%には達しなかった。

 6ヵ月間のLVADからの一時的離脱成功率は、MPC群が平均61%、対照群が同58%で有意差は示されなかった(率比:1.08、95%信頼区間[CI]:0.83~1.41、p=0.55)。なお、安全性の主要エンドポイントの発生は認められなかった。

 1年死亡率は、MPC群14.2%、対照群15.1%で、有意差はなかった(ハザード比:0.89、95%CI:0.38~2.11、p=0.80)。重篤有害事象の発現頻度も有意差はなかった(100患者月当たり70.9 vs.78.7、群間差:-7.89、95%CI:-39.95~24.17、p=0.63)。再入院率も同等だった(0.68 vs.0.75、-0.07、-0.41~0.27、p=0.68)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 佐田 政隆( さた まさたか ) 氏

徳島大学大学院 医歯薬学研究部 循環器内科学 教授

J-CLEAR評議員